第8話 一蓮托生

「私たちは一蓮托生です。冒険者の方はある日突然昨日までの自分と全然違うということを感じたことはありませんか?」

 アランは心当たりがあり頷く。

「私は今月中にスライムを倒します」

「スライムが倒せる子供の令嬢がどこにいるんですか!!」

「私が一人目になります。事例によると石を投げただけでも倒せたこともあるらしいではありませんか」

「あれは、たまたま運よく核に当たったから倒れたんですよ!!」

 アランがすかさずツッコム。


「農民だって大繁殖の時期になれば、鍬や鋤を手に戦うでしょ」

「お嬢様、それは働き盛りの男性の話で、女、子供は違います」

「だから、あの薬が役立つのです。ヤバくなったら逃げます」

「あの程度の早さでは追い付かれますよ」

 先日の私の爆走をみていたフランは冷静だ。

「だからこそアランがいるではありませんか。無理そうならアランが薬を服薬し私を抱えて逃げればいいのです」

「いやいや、お嬢様の家からでてすぐの護衛と明らかに魔物を倒しに行くのでは給金がぜんぜん違いますよ!」


 そんな時だ。

 扉が激しく叩かれた。

「失礼いたします。アラン様、ここからすぐの北の農園にお力を貸していただけませんか?スライムがでまして」

「責任は私がとります。お嬢様は本物の魔物をなめていらっしゃいます。一度その目でご覧になってみればよいのです」

 フランがそういう、これはチャンスである。

 スライムなんて雑魚中の雑魚なのだから。



 アランに抱えられ私は馬に乗る。

 人だかりが見える。

 どうやらあそこにいるようだ。

 農民は鍬や鋤を握っている。




 大型犬から私の拳サイズのスライムがうじゃうじゃいた。


 皆よってたかって一番でかいやつを殴る、細かく分裂する。

 分裂したのをほっておいてでかいのを殴る、そのうち増えたのがくっつきはじめる。

 あれ、気がついたら大きいのが二匹になったよ☆パターンという初歩の初歩ではないか。


 毎年大量発生してるのに倒しかたすら知らないのか。

 そもそも倒しかたを知らないから大量に沸くんじゃないの?


 大きいのを倒すには、そりゃ核を一撃で壊す必要がある、そりゃ大の男がよってかからないと倒せまい。

 でもある程度小さいのは私だって踏み潰せば倒せる、そうして少しずつ小さくして倒せば、子供にだって倒せるのだ。



「これは………どうしてここまで増えたんだ」

 アランが愕然とする。

「倒しかたを知らないからでしょう。私の父は農地を豊かにする方法を農民に教えても。戦うすべを教えることにまでは手が回らなかったのでしょう。さぁ、アランついてらっしゃい。これ以上増える前に一掃しますよ」

 私はヒラリと馬から飛び降りる。




「どきなさい」

「なんだ、子供?」

「もう一度いいます、どきなさい」

 ただならぬ雰囲気に不思議な顔をしながら道を開ける。


 うじゃうじゃいる。

 しかし覚悟を決めて私は一番手前にいる私の拳ほどの小さなスライムを踏みつける。

 ムニュニュと動くが何度も踏みつける。

 弾力がなくなり平べったくなり消えた。

 小さいやつ一匹倒した。


 いける。

「女子供全員呼んで、動ける人全員で小さいのを踏み潰すわよ」

 私はその間も三びき潰してやった。

「大きいのは一撃で仕留める必要はありませんから。分裂するので、この一番小さなサイズまで分裂させたのを皆で踏み潰しますよ!!小さいのなら私ですら倒せるんですから。ほら、もたもたしない。さっさとしなさい」

 私が踏んだのが消えたのをみて、皆であわてて人を呼びにいく。


「アランは逃げだしそうなのを阻止しなさい」

 後は大人の男が殴り分裂したのを女子供が踏む踏む踏む。


 最後の一匹を潰す。

 半径2mほどが光る。

 戦闘おしまいの合図だ。

 そして、中央には戦利品が落ちるら。

 わずかばかりの金とスライムの粘液が入った袋だ。


 町民からは歓声が上がる。

 私は自分の身体の異変を感じるレベルアップである。

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