02



 はじめに指を齧られた

 凍えるような冷たい風が 私の体から体温を奪っていた


 次に空腹が飢えとなっておそってきた

 何もしないでいれば 病が進行して 体を蝕んでくる


 逃げなければ 逃げなければ!


 この場所も私にとって安らかな場所ではない

 安寧をもたらしてはくれない


 逃げてきたのに 逃げても逃げても

 また逃げ続けなければならない


 誰にも手を伸ばせない

 誰の手も借りられない


 私は独り

 たった独り

 独りきりの力だけで 頑張るしかない


「生きる為には何でもしなければならない」


「他人から幸せを奪ってでも」


「誰かの大切な何かを台無しにしてでも」


 けれど、そうまでしても私は幸せになれない

 満たされない


 どうして?


 罪を犯して押し込められた牢獄の中で 私は涙を流した

 泣いたところで何も変わらない

 この過酷な世界は優しく微笑んではくれない


 だけれど


「泣かないで」


 世界は優しくなんて全然なかった

 それでも 奇跡は人に微笑むのだと

 私は その時知ったのだ


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