第19話
言葉の途中で、紘之助が何より望んだ答えが返ってきた。彼は、耳に
夜よりも深い闇色の瞳が、
「燈吾様…-」
低い
「大丈夫だ、紘之助、私は、そなたの本来の姿も見たい。今そう思っている」
「承知致しました…、では、もう少し後ろへお
「分かった」
何が起きるのかは分からなかったが、とにかく言われたように後ろへ下がって、再び紘之助と視線を合わせた。
「-…これが〝紘之助〟にございます」
一段と低くなったその声は、空気を揺らしながら燈吾の耳に響いた。彼が立ち上がると、紘之助は一瞬身体を揺らしたが、離れて行くのではなく近づいてくるのが分かると、そっと視線を合わせた。燈吾の身長からすれば、立って手を上げてちょうど良い場所に、紘之助の額から生えている漆黒の角がある。
「-美しい鬼だ、
角を撫でながら言い切る彼に、紘之助は少しの安堵と嬉しさを感じた。一番知ってほしい存在に、ようやく秘密を打ち明けられたと。そして、例えこの
「…私は生まれて幾千年が経ちます、この里へやって来て、薄れていた記憶も
種族の違いがなんだと言うのか、習慣の違いがなんだと言うのか、殺しを
「そなたは、藤丸だった紘之助、人間だった鬼。ただそれだけだ。よくぞ戻ってきてくれた、そなたは、私にとって掛け替えのない存在なのだ。鬼でも人でも関係ない」
紘之助が、涙を流しながら燈吾の身体を優しく抱き寄せた。この里には、紘之助が把握している範囲で二つの問題が起きようとしている。だが、今この瞬間だけは、ただ二人きりの時間を持とうと、そう思った。
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