第四章
三体のアンドロイドたちは一階の広いドームに降りて行った。
三体がドームに降りた直後、МR2047と慶介が先導する一団が現れた。
続いて反対側の二方向から2058と2088の群団が姿を現した。その直後に複数の労働用アンドロイドたちが追ってきて銃を構えた。それを2047は即座に制した。
ドームの中心に立つ3033ら司令官三体を多数のレジスタンスとコロニーの人間たちが円陣で取り囲んでいた。少しの間、静寂の時間が流れた。3033は口火を切った。
「武器は持っていないようだな。戦いが目的ではないと思っていいんだな。2047、君たちが彼らを先導したのだな。理由を説明したまえ」
「ちょっと待ってください」彼はそういうと慶介の方を見た。
「これより先の交渉は君がするのだ。人の代表として」そして彼は慶介の背中に手をあててゆっくり前に押し出した。
「君たちの要求は何だ? 言ってみたまえ」3033が訊く。
「俺たちに自由を返してほしい。遠い昔の暮らしを皆望んでいるんだ」慶介は全く動揺を見せずに堂々という。
「自由? 君たち人間はこれまで自由であったがゆえに争いを繰り返してきたのではないのか?」3033は問う。
「われわれは決して争いを好んではいない。われわれの自由を侵害しようとする者がいるから抗うだけだ。皆が自由に生きるために」
「それでは君たち人類は自由のために過去度重なる戦争をしてきたというのかね?」
「みんなの自由はつまり世界の平和だ。それを成すために仕方なく行った行為だ」
だが慶介に3033は反論する。
「私はそのように解釈していない。人間は自分の欲のために争う。そのためには他の者のことなど考えない。そして果てしなき欲望のため争いはどんどん大きくなる」
「たしかに人間は様々な欲望を持ち合わせているが、それは進化するうえでなくてはならないものだと思う」慶介はいう。
「だが君たち人類はその争いのために全世界を滅ぼしかけたのだぞ。核という悪魔の兵器で」3033はそう言い放った。しばらく沈黙の時が流れた。
そして慶介は続けた。「たしかにわれわれ人間は不完全な生き物だ。一生のうちに数え切れないほどの過ちを犯す。だがその一つ一つを糧としてさらに成長するものだ。同じ過ちは二度と繰り返さない」そう言い切った。
「この地球が核のために死の世界と化してからそのような事を言っても遅いのだぞ。われわれМRは人間の手によって造られたのは事実だ。しかしながらわれわれも意志を持っている。われわれは間違った選択をしたとは思っていない。君たち人間を管理することによって世界の平和を維持しているのだ」3033は語る。
「これは平和などではない。俺たち人間は皆感情を持つ。毎日悲しみで泣いているような暮らしは断じて平和などではない!」慶介のその言葉にまわりの群衆からーそうだ! そうだ!-と声があがった。
「基本的にわれわれには感情はない。しかし感情などというものは厄介なものではないのか。他人を憎んだり妬んだり争いの根源はこの感情が原因ではないのか」そういう3033に2047が弁明する。
「私たち三体はジュラ計画によって人間の持つ感情を体験しました。それは決して悪いものばかりではありません。すばらしいものも多くあるのです」
「ほう、それはどんなものかね?」
「愛、思いやり、喜び、勇気」そういう彼(МR2047)に3033は訊く。
「それは具体的にどういうものなのかね?」
「愛や慈しみは肉親や他人を思いやる気持ち。自分や他の者の幸せを表す感情が喜び」
「私にはよくわからないんだがね」3033はそう言いながら首を傾げた。
「彼ら人間はマイナスの感情ばかり持ち合わせているのではないのです。プラスの感情により彼らは必ず世界を平和に導くと私は確信します」そういうと彼(МR2047)は慶介を見た。そして慶介も彼を見た。その眼差しにはもう疑いのひとかけらもなかった。
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