第四章

 МR2047ら三体のアンドロイドたちは数台のトラックでレジスタンスたちを引き連れコロニーに向かっていた。

 数年前まではМRによって造られた殺人アンドロイドたちが多数コロニーの外で人間狩りを行っていたが、レジスタンスの数も激減したためその活動は休止していた。

 さて、彼らアンドロイドとレジスタンスたちの立てた計画は大まかにはこういうものだ。コロニーは真上から見ると正五角形をした広大な施設だ。その五つの頂点が出入り口となっており、МR1000番台の番号を付けられた労働用アンドロイドたちが常に出入り口を巡回警備している。2000番台はその上官の立場でさらに3000番台は最高司令部の上層司令官たちだ。労働用アンドロイドは直接上層司令官から命令を受けることは出来ないようにプログラムされている。従って彼ら2047たちを反逆アンドロイドとして捕えよという命令を受けることはないのである。これはかつての人間社会の組織をモデルにして作られているからであった。 まず、五つの入り口のうちの二等辺三角形をなす三つの頂点(1番、3番、4番)の入り口から彼ら三体が入り込む。そして彼らは労働用兵士たちに命令し、それぞれ三つの入り口から残る二つの入り口(2番、5番)に向かわせる。その隙に彼らはレジスタンスたちを引き連れヒトデの足のように伸びる五本のメイン通路のうちの三本の通路から上層部たちがいるコロニー中心部へ向かう。計画はだいたいこんなところだ。

 やがて彼らの運搬用トラックの前方にコロニーの巨大な建造物が見えてきた。

「新型手榴弾がこれだけあれば十分だ。これでやつらを何体も吹き飛ばしてやるぜ」一人の血の気の多い若者が息巻く。

「みなさん、誤解しないでいただきたい。今から戦いに行くのではありません。話し合いに行くのです。МRと人間が」彼は必死の思いで説得を試みる。

「手榴弾は隠しておけ。最悪の事態のみに活用する」慶介がいう。

「そのようなものは必要ないかとおもいますが・・・」そういう2047に、

「俺たちが捕虜となるような事態が生じた時は皆これで自決する」慶介が覚悟を決めていう。

 三体のアンドロイドたちは各々三つの出入り口に向かった。

 2047は1番口に向かった。そこには三体の労働用アンドロイドが見張りに立っていた。

「やあ、ご苦労さん。先程2番口に不審者が数名現れたという連絡が入った。すぐに向かってくれ」彼はその三体に指示した。三体はすぐに2番口に向かった。

 このように2058と2088も3番口と4番口で実行した。そして彼ら三体はレジスタンスたちを誘導しコロニー内部に侵入した。

 五分も経つとけたたましい警報サイレンが鳴りだした。しかしこれは予想内のことであった。やがてその警報にコロニーにいる人間たちが集まり始めた。彼らは戸惑っていた。そして今初めて慶介たち外部のレジスタンスたちと顔を合わせたのだ。

 慶介は彼らにいう。「さあ、みんないっしょに来てほしい。今こそ立ち上がるんだ」慶介は彼らの顔を見た。その瞬間、生気がなく死んだような目つきをしていた彼らの顔つきが変わった。そして目はいきいきと輝きだした。慶介たちに協力する意向を表明したのだった。その中にはジーナの姿もあった。

 群衆たちは挙ってコロニーの中心部に向かって歩みだした。皆が共通のひとつの大きな目標を成し遂げようとするが如し力強い足取りだった。

 だがすぐに異常事態に気づいた労働用アンドロイドたちが跡を追ってくるのは目に見えていた。

「みんな急ぐんだ!」慶介は皆を促し全員駆け足で進んだ。



 コロニーの中心部三階にある指令室には3033、3057、3077の三体の上層司令官アンドロイドたちがいた。

 今だ警報サイレンは鳴り続けている。しかし彼らは全く動揺する様子はなかった。

「反逆者たちはあと三分でここに到着します。その中にはコロニー内の人間たちも混じっています」3057が報告する。

「こうなることを予測していたのですか?」3077は3033に訊く。

「彼ら人間は常に進化し続けているんだ。いつかは彼らと対決しなければならない時がくると思っていた」3033は落ち着いて答える。

「彼らは武器らしきものは所持していないようです。殺人アンドロイドを起動しますか?」3057は3033に指示を仰ぐ。

「いや、ここは彼らの意見を聞いてやろう。彼らを先導しているのは2047たちなのだから」

「どうしてそのような弱気なことを。今までのように反逆する者たちは抹殺すればいいのではないですか?」そういって苛立つ3057に3033はいう。

「実は今、全世界で同じ現象が起きているんだ。人間たちが一誠に立ち上がったのだ。しかもそれは皆あのジュラ計画を行った直後にだ。アメリカも中国もヨーロッパも」

「それではジュラ計画は失敗したと?」

「いや、成功だったのかもしれない。これが全世界を平和に導く足がかりになるかもしれない」

 そして三体のアンドロイドたちは一階の広いドームに降りていった。 

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