第17話 大事に生きる
多い夜には3件、少ない日でも1件は直入りが来る。
寝台車で搬入されるご遺体を三人がかりで安置する。
落としては大変。緊張を要する。
シキビを供え、ご飯とお団子を供え
ご家族や僧侶にお茶の接待をする。
一通り済ませると、葬儀受注の担当者が
駆けつけるのでお役御免。寝ることが出来る。
出来ると言っても朝までに又1件ということも
しょっちゅうで、仮眠程度だ。
人の死というものに触れる度に
大事に生きなくてはと慎三はつくづく感じる。
妻の言動が気になっても、以前のように
こだわらなくなったし、物言いも優しくなった。
元々、慎三は優しい性格の持ち主であったが
長年の勤務ですっかり人間が変わってしまっていた。
宿直勤務は厳しいが、人生を見直すには悪くない。
慎三は、時々そう考えるようになった。
人は滅多に死なないが、簡単に死ぬ。
出来るだけ後悔の少ない人生にしたい。
今までの人生を取り戻すことは不可能だが
これからの人生を有意義にすることは可能だ。
たとえ近い内に死ぬことになっても
バタバタしないようにしよう。
家族に迷惑が極力かからないようにしよう。
そういったことを考えながら慎三は
勤務に励んだ。
身体は相変わらずきついが、以前のように
飲みに出たりが全くなくなったので
その分健康になったような気もする。
まあ、出来たら、今年一杯頑張ってみるか・・・。
慎三は、そう考えることにした。
瀬戸内は、初夏のような日もあり、真冬のような
寒の戻りもある不安定な気候であった。
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