第15話 我慢

恵美子の友人は、1泊して徳島に帰って行った。

誘われたが、疲れていると言って逃げた。

恵美子が居酒屋やカラオケに連れて行った。

友人は、飲むことも歌うことも大好き人間で

賑やかな性格だ。

徳島の阿波踊りに誘われたが、笑って誤魔化した。


 実際、慎三は疲労していた。

毎回異なる会館に行き、慣れない仮眠室で休むが

夜中の寝台車が来ない晩でも寝付かれなかった。

ウトウトする感じもない。

ずーっと起きている感覚だ。


 しかもいろんな音に翻弄される。

FAX, 電話 携帯 子機 ドア音

遺族室の叫び トイレの音

駐車場 近くのコンビニ わけのわからないきしみ音

耳栓をするわけにもいかず、アイマスクをしても

眠れない。

事務所は照明を落としても真っ暗には出来ない。

暗くしないと眠れない慎三にはかなりのストレスで

あった。

何か薬とも考えたが、夜中の搬入に対応出来ない可能性がある。

おかげで、勤務が明けても血圧が150、90と

高止まりとなった。


 普段低血圧気味の慎三も此処に来て弱気の虫が起きた。

・・・やっぱり自分には無理か・・・・・。

やり始めた以上続けたい気持ちもある。

年配の宿直者の方が励ましてくれる。

「慣れたら大丈夫やで」

・・今週1杯頑張ってみよう。

慎三は、自分に鞭をいれた。

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