第10話 夜中の直入り
出勤日は、靴を磨き、シャワーを浴びて喪服に着替える。
毎回違う会館に勤務するので、早めに家を出る。
途中でおにぎり、パンを買う。
今夜の勤務は、福さんであった。
夜中の1時に直入りが1件入った。
寝台車の運転手の指示で、ご遺体を一緒に運んだ。
軽い・・・軽すぎる・・・・。
事前のFAXで女性というのはわかっていたが
年齢は不詳だった。
子供?
老人?
安置室の布団に丁寧にお運びした。
胸の合掌の手がチラリと見えた。
ものすごくやせていて、黒っぽい・・・。
恐くて顔は見られない。
ご飯とお団子をお供えして、合掌する。
何やら、泣けて来た・・・・。
全く見ず知らずの方なのに・・・・。
夜中の仕事が済んでも、寝られなかった。
これは、自分には無理だと感じた。
きつい・・・・。
何が?
うまく言えないが、きつい・・・・。
別に故人に呪われるわけでもなかろうが・・・・。
6時に事務所に行くと、福さんが
「いやあ、ゆうべは忙しくて大変でしたね。
よく頑張られた。まだ日が浅いのに、感心、感心」
「はあ・・・おはようございます・・・・」
何やら気の抜けたような挨拶になってしまった。
会館周りの清掃や、ご遺族の部屋の掃除を済ませて
引継ぎの後、駐車場へ。
車に乗り込むと、一挙に睡魔が来た。
眠い。
通勤ラッシュの終わった9時過ぎの街に
車を走らせた。
家の近くに来ると、南に瀬戸内海が見えて来た。
夜勤明けの心に、海の青色がまぶしかった。
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