第8話 通路の怪

家に入ると恵美子が食事を作って待っていた。


「それならそうと言ってくれればいいのに・・」

「・・・・・」

「じゃあ、次から夜食かお弁当つくりましょうか?」

「うん、うう・・・・」

曖昧な返事をして、そのままベッドに潜り込んだ。

シャワーを浴びる気力も体力も残されていない感覚である。


・・・それにしても、あれは、気味が悪かった・・・。

真夜中の直入りで3階と1階を何度も往復した。

エレベーターを降りて宿直室に向かう広い通路を歩いている時に

誰かに右肩をサッと撫でられたような感覚が走った。


振り返ると誰も居ない・・・。

ここで一瞬、背中がゾッとした・・・。


何か白いものが床に見える・・・・。通路のど真ん中である。

何度も通ったところなのに、あんな物は、さっき、なかったぞ・・・。


トイレで使う手拭の白いペーパーであった。

乱暴にグシャグシャと丸めてある。

はて。おかしい・・・。

何度も通っているのに、今、何故、あるんだろう・・・。


通夜のご遺族の部屋にはトイレが完備されている。

深夜に寒い中、遠いトイレに来るのはいかにも不自然である。

何か気持ちの悪さを残したまま夜は更けた。

それを思い出すと気色が悪い・・・・。

・・・やっぱり、やめよう、無理だ。

身体にも悪いけど、なんか気味が悪い・・・・。

そんなことを考えている間に慎三は眠りに落ちる。

・・ああー、ありがたい・・自分の布団が1番だ・・・。

あったかいなあ・・・・・・。

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