第6話 ストレス
初めての勤務では、嫌な先輩の対応もあったけれど
まあ、世間はそんなものだと考えることにした。
気になったのは2つ。
事務員さんに各スタッフの名前をそれとなく確認した際に
ひとり勘定が合わなかった。
勘定というのには、わけがある。
通夜の際に会場で働いていた男性の名前を聞いた際に
彼女は言った。
「えっ、そんな人、居ませんでしたよ」
「ええっ・・・」
「遺族の人じゃないですか」
「・・・」
確かに居た。
目立たないように会場内で動いていた。
お通夜終了後、会話も交わした。
「はじめまして。村木と申します。よろしくお願いします」
「慣れるまでは、大変ですよね」
名前も言ってくれたような気がするが
どういうわけか聞き取れなかった。
何となく帰りを急いでいるように感じたので
そのまま別れた。
他の人に聞けばわかるだろうと
その時は思った。
深夜になり事務所で二人きりになった時に
川村に各スタッフの苗字を順番に教えてもらった。
スポーツ新聞を読みながら、面倒くさそうにしながらも、
その男の人のところで言われた。
「そんな男おらんかったぜ」
「はあ、そうでしたかねえ・・・」
それ以上聞くのを中止した。
何やら気味が悪かった・・・・。
折り畳みベッドのきしみではない音が
深夜の事務所で時々した。
照明は点いているが、静かな事務所で
ギイーギイーと音がするのだ・・。
まるで誰かが椅子にもたれて、音を出しているかのようだ・・。
その音が不規則に出てくるから気持ちが悪い。
どこから出てくるかと考えると
出てくる場所が決まっていない。
結局眠れなかった・・・。
聞かされていた夜中のご遺体の搬入こそなかったが
かなりにストレスであった。
1回きりは、恥ずかしいなあ。
しかし、次の勤務、行けるかなあ・・・。
特殊な夜勤である。
慎三は疲れ果てて食事もせずに寝てしまった。
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