忘却の彼方に

望んで棄てられようとする

すべてが、分からなくなる前に

どうか苦労を背負わず

私を棄ててください、と…


どうしてそんなことを言うのだと

私を抱き締めるあなたの声は

震えて泣いているようだった


泣かないであなた、愛しいひとよ

壊れていく過去を繋ぎ止められるなら

きっと苦しめやしないけれど


少しずつ蝕まれていく脳は

やがて無へと還るから

愛しいあなたを忘れる前に

どうか私を棄ててください


美しい思い出の幕を引き

忘却の彼方に消えていきたい

そうして、あなたの記憶の中で

変わらぬ笑顔を咲かせるから…


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