捜査編③.1――あとひとつだけ
「練習中に出入りしたヤツがいないかだってェ?」
控え室に入ろうとするイワビーとジェーンをアミメキリンが呼び止める。ふと気になったものの、タイリクオオカミがステージから動かないので、アミメキリンだけでこうして聞き込みにやってきたのだ。
「そ。あとひとつだけ、念のための確認なんだけど。誰かいなかった?」
「うーん。誰かって言われてもなぁ。みんなしょっちゅう出入りしてたぜ。なあ」
同意を求めるイワビーに、ジェーンが頷く。
「はい。気分転換とかお手洗いとか。私も含めて皆さんよく控え室から出てました」
「なるほどね。つまり、みんな何かしら誰にも見られてない時間があったってことね……」
「あのー。どうしてそんなこと確認するんです?」
「えっとー、その……。大したことないんだけど。ま、念のためよ」
ふーん、と納得したのだかしてないのだか。ジェーンとイワビーがとりあえず頷いた。こういうとき、タイリクオオカミの口のうまさが羨ましくなる。
「とにかく。これでも俺たちに用はないよな。それじゃ、明日に備えて休ませて貰うぜ」
言ってドアを開けようとしたイワビーたちを見送ろうし、ふとアミメキリンは首をかしげた。
「明日? 明日なにかあるの」
何度も呼び止められたイワビーが不機嫌そうにため息を吐く。
「んー、ああそうだよ。明日朝早くに会場を掃除するんだ。さっきプリンセスがやってきて言ったんだよ。”いつまでもこうしているわけにはいかない。ショーを楽しみにしてるお客さんたちのためにも、早く会場を元通りにしないといけない”って」
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