第13話 隣町の雨

「隣町の雨」


隣町に雨が降りだして

紅い傘

碧い傘

黄色い傘

居並ぶ道路信号とともに

色とりどりに

世界を彩る


いざ振り返ると

いつか歩んだ道は遥か遠く

もはや戻ることができない

それはあの日の自由を呼び起こす


美しきものがそれを否定するように

悪しきものはそれを否定する

許されざる穢れた世界に

怨念、邪念は封印されてしまう


鳥達はどこへ舞い降りるのだろう

この広い世界の中で

居場所を見つけられず

迷い子になっていやしないか


余計な心配をして

急に心持が悪くなった人間たち


あの日の自由が眩しかったから

より一層、

今日の喪失感が身に沁みる


隣町の雨が止んで

せっかく色づいた町が

パラパラと透明に戻る


その瞬間を捉えた鳥達は

この町の居心地をどう感じたのだろう


一羽の鳶がひらりと宙返りして

遠くに居並ぶ山々に向かっていった

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る