第6話 麗しき別離

「麗しき別離」


少しずつ季節が転じて

はらはらと舞い降りる花弁

一枚一枚手に取って眺めては

もう樹木には戻らぬのだと

幾体かの弱々しい体躯が

私にその事実を気付かせる


天に目を向けて

遠ざかる星空を眺めては

急に不安になる私を赦したまえ


讃えよ

君が数々成し遂げてきた

万人に対する救いを


祈れよ

君がこれから成し遂げる

偉大なる成功を


曇天の空

変化を繰り返す大宇宙

そのうち涙雲が押し寄せる

君の行方を追う虹は

決して邪魔立てはしない


そうなのだ、

自由が舞い降りたのだ

君に


君は平然と黙さず笑い

何事もなかったかのように

路上を跳ねる


才能とは罪

来るとわかっていた別離が

より一層大きな穴に転じて

もはやすべてに終止符を打つ


勢いあまって涙した私に

君は優しくハンカチを差し出す

いつもそうだ

すべては既定路線、予定調和

君はそうやって

自分の自由位置を確保してきた


私は再び天を見上げ

変わらぬ星空に願いを込めて

君の自由を祈るのだ


大切なのは絆

繋がらない人生も稀に交錯する

その一瞬のために存在する時間と空間

私は私の人生に束の間宿ったその時空間を愛す


失われた過去を塞ぐように

新しい未来が実を付ける

そんな生易しい事態ではないと

きっと誰もが気付いている

だからこの別離に涙は赦されるのだ


すべては既成事実

造られた今を思いきり悲しむのだ


君はすべてを悟ったかのように

皆の前から遂に姿を消した

今や樹木には緑の葉が生い茂る

私はかつて色づいた花弁を決して忘れない


一陣の風が私を襲う

もう二度とは還らぬと誓った君の翻意を願って

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