第6話神様の悪戯

「元の世界に戻りたいよ 」

アカネはただ、神に問いたかった。

もし全知全能の存在がいるのなら、この先どうなるのか、この決められた世界でしか生きる事が許されない状況を、全てを打破する方法を聞きたいと願った。

ハルとアカネは逃げた人々をどうすれば良いのか悩んでいた。

確かにこの世界は間違っている。それは誰もが理解していた。

だがそれを変える事が出来る程、2人の存在は大きくなかった。


聖堂の屋根の上に登り2人は横になり空を見上げた。

「綺麗な夜空....こんな感情も、全て本物じゃないのかな。」

ハルの放った言葉にアカネは何も言えなかった。


「こんなゲリラ部隊みたいな組織は元々できると決まってたのかな。」


「私達が政府に、世界に抗うことは決められてたのかな。」


いつも勇敢で元気な頼り甲斐のあるハルは、いつの間にか変わっていた。

ハルの言葉は、自身をみるみる弱らせていった。

初めてあった時のたくましさ、あれも誰かに決められた感情だったのだろうか。

次の瞬間、アカネはそっとハルを包み込んだ。


「違うよ、そんな事ない。私達には色がある。自分で決めて、自分で変えられる色を。」


「泣いていいんだよ。ハルさん、私と会ってから1回も泣かなかった。よく頑張ったねって、よく耐えたねって、私ならそれが言えるよ... 」


可哀想なハルに、可哀想なこの世界に泣いていた。過去の自由な世界から来た1人の少女が。


幻想的な、真っ暗な夜空に無数の輝きを放つ星々を見ながら2人は改めて決意をした。


『  「私達でこの世界を変えよう! 」』


気持ちを落ち着かせた2人は聖堂の中へ戻った。

すると区脱者の皆は、昼間の悲劇が無かったかのような素振りだった。

聞くとみんな、2人の話を聞いていたらしく感動したそうだ。


「今日は呑むぞ〜!!」

「自由が欲しい〜!!」

みんな叫んでみんな笑った。

望んでいたのかもしれない、こんな2人を。

待っていたのかもしれない、こんな2人を。


もしかすると人々の言う「神様 」が仕組んだのかもしれない。

アカネがこの世界に行くことを。

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