第7話
祖母に案内されて、少女は洞窟の中の隠れ家に入った。ランプが灯ってぼんやり明るいそこには、祖母の使い魔であるケンタウロス、人間の身体と牛の頭部を持つ怪物、が五体いた。しかし、我々がイメージしているものとは若干違い、彼らの体長は五〇センチメートル程度しかなかった。
うろちょろと動く彼らはそれぞれ掃除道具を持っており、祖母の命令で隠れ家を綺麗にしていた。少女の足もとを拭きたいケンタウロスは、モップで少女の靴をつつき、どいてもらおうとした。少女は掃除の邪魔をしたいわけではないのだから、口で言えばいいだろうと思うかもしれないが、ケンタウロスたちは言葉を話すことができなかった。加えて、表情もあまり変化しないので、不気味に思われがちだが、よく観察すれば行動のひとつひとつに愛らしさを感じることができるはずだ。ゆえに、毛嫌いせずによく見てやってほしい。
少女がケンタウロスたちの手際の良さに感心していると、祖母は奥のクローゼットから取り出した布を少女に手渡した。
「これを着ていれば、あらゆる危険を退けることができる」
その布は純白のローブであり、絹のようななめらかな手触りで、布団カバーよりも軽かった。少女はコートを脱いでそれを羽織ると、真奈美に抱きしめられているときと同じような温かさがあると感じ、目を閉じて、ありもしないにおいを胸いっぱいに吸い込んだ。脱いだコートはケンタウロスが何も言わずにハンガーにかけていた。
「よく似あっとるのう。中がジャージじゃなければお姫様のようだ」
真奈美以外に御姫様のようだといわれたところで嬉しくもない少女は祖母の言葉を無視し、外に繋がっているだろう階段に視線を送った。
「あの奥から外に出ることができるけれど、決して油断せず、危険があったら迷わずにげなさい。いいね?」
少女は祖母の言いつけにうなずいた。さきほどまで掃除道具を持っていたケンタウロスたちも、今は各々の得意な武器を持ち、少女と祖母の護衛役になっていた。
「よし、行こう。真奈美を助けに」
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