フェイズ20 アゲイン&ミスリード
「あー…あの時の船よりかは埃っぽくないわな。」
軍事病院から逃げ出したメイを追えとの指示を受けた竜胆だったが、今現在彼はダクトの中を這いずり回っている。
勿論彼なりに見当をつけて行動した結果であるが、傍から見ればただの変人である。
しかしながら偶然とでも言うべきか
「!………えっ?」
「あっ。」
2人はダクトの中でばったりと再会してしまった。
「えっ…竜胆?ねぇ竜胆なの?」
「はい竜胆です!竜胆だけどそんなに詰め寄らないで!俺の空間無くなるから!」
「あっ……ごめん。
でもまさか君まで逃げてると思わなかった。いやーでもこれで心配事が1つ消えたよー。」
今なお彼女は竜胆が逃亡の身であると思っている。ならまだ彼の事も連れて行こうとするだろう。1度死にかけたにも関わらず。それほどまでに彼女はお人好しなのだ。
だとすれば彼女の為にも自分の為にもここで本当の事を言うべきであると考えていた。
「ただいつまでもダクトの中に入ってる訳にもいかないし…」
「……悪い、俺逃げられねぇわ。」
「えっ…?ちょっと待って、どういうこと?」
「俺、今は軍の人間なんだよ。だからここから逃げる必要も無い。
それにホントはアンタの事を捕まえろって言われて来てんだ。」
ここまで言って、竜胆は若干後悔した。捕まえに来たという事まで言う必要は無かっただろう。これ以上彼女からの心象を下げたくないという実に保身的な考えによるものであるが。
「そっ……か。良かった、安心したよ。
意外と上手くやってるんだね!
ていうか私捕まっちゃうじゃん。」
「いやいやいやここで捕まえるほど俺だって空気読めない人間じゃないから!」
「まあここで君が私の事捕まえようとしても十分逃げられるんだけどね。」
「そうか。
……なんか安心したよ。会えなくなる前にこうやって話せてよかった。」
「いや?もしかしたら牢屋で再開するかもしれないよ?」
「縁起でもないこと言うなよ…。」
「じょーだんじょーだん!
…じゃあ私そろそろ行くね。」
「そうは問屋が卸さないっすよ?」
この場に居ないはずの人間、江月の声がダクトの中に響き渡った。
「すんません、松山さん。万が一に備えてその無線機に盗聴器つけてたんです。」
その無線機から江月の声が響き渡る。
正直、第5部隊の面々が自分の事を信じ切ってないのは竜胆自身薄々勘づいていたが、まさかここまでしてくるとは思っていなかった。
「あんたら、ほんっっと最高だな!」
彼女を含めた自分達の命運を彼らに弄ばれているような気がした。勿論、これで冷静でいられるほど竜胆は人間が出来ていない。
「普通たった一人女の子牢屋にぶち込むためにそこまでするか!?あんたらイカレてるよ!」
「えっ?松山さん?……それマジで言ってます?」
「勿論、あんたらの事を心の底からイカレてると思ってるよ!」
「いや、そうじゃないんすよ。……別に俺達その子を牢屋に入れたい訳じゃないっす。」
牢屋に入れたいわけじゃないなら一体どこに…。
そんな竜胆の疑問は直後の彼女の言葉によって解決する事になる。
「だーかーら!私は軍の人間にならないってんでしょうが!」
「でもウチの隊長はアンタの事をめちゃくちゃ推してるっすよ。何でなんすかね松山さん。隊長ロリコンなんですかね?」
「えっ、ちょっと待って分からない。もしかしたら隊長はロリコンかもしれないけどそれ以上にちょっと待って。
……江月はさ、メイの事を捕まえに来たんだろ?」
「はい、そうっす。」
「何のために?」
「第5部隊に入隊させるためにっす。」
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