フェイズ10 リフレクション&ヴェンデッタ

「俺についての…事?」

「そ。だって私ばっか話してて不公平だなーって思うし。」

「まあ確かにそうだけど。」


ただ全てを正直に話していいのか、彼には分からなかった。

半日近く過ごして確信したが、この世界で生きていくなら彼女の協力は必須だ。


「俺の生い立ちとか、特に何もないよ?ホントに何もないから話すだけ無駄っていうか……」

「何もないって言われるとそれはそれで気になってくる。」


無理だ。

多分だろうけど、彼女は勘がいい。どこまで分かっているのかは分からないけど、自分がただの人間じゃない事は察しているのだろう。

だとすればこれ以上嘘をつくのは得策じゃない。寧ろ彼女からの疑念を深めかねない。


「………俺さ、実は過去から」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「うーわ、びっしょ濡れ。

やらかしたなー。あのちっこいガキの方を先に殺しとくんだった。」

「メイ・ルーシェですか?」

「あれの右腕の火力舐めてたわ……。

まさか甲板叩き壊すなんて誰も思わないじゃん。」

「…過ぎた事を言っても何も意味は無いと思いますが。」

「反省と復習。大切な事だろ?

まあ私達の場合は復習ふくしゅうじゃなくて復讐ふくしゅうか。

ハハハハッ。」

「こちら側の被害はゼロです。

私達がこれからするのは復讐なんかじゃ…」

「復讐さ。

復讐する理由なんざ、それだけで十分だ。」

「……やはり噂通りの変人ですね。」

「変人じゃなきゃ「柱」なんざ務まらない。

設立当時から言われてた事だろ?」

「初耳ですけど。」

「そりゃ良かった。知識が増えたな。」

「…………彼等を捕まえる勝算は?」

「アリアリだ。

三重くらいトラップを仕掛けてある。

孤立無援のガキ共に抜けられる訳がない。」


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


「過去から来たんだけ……」


メイが彼のその言葉に反応するよりも、先に


店の天井が崩落した。

突然の出来事に店内は騒然とした。


「何が……ってッ!」


巻き上がる砂埃の中から、凡そ1cm程の銃口が現れた。

そして発砲音が店内に鳴り響いた。

あまりに突然過ぎる出来事に半ば放心状態にあった竜胆だったが、発砲音によりなんとか現実世界に引き戻された。

だが遅すぎた。


「いっ…たぃなぁ…。」


彼の目の前でメイが机に倒れ込んでいた。

銃弾が貫通したであろう右脚を抑えながら。

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