フェイズ9 ワールド&ワイド②
「死刑宣告かぁ……。確かにキツいけどそんなに気を落とす事じゃないでしょ。私もだし。」
「……………はっ?」
「「メイ・ルーシェ。
何か知らない間に凄いもの盗んでたみたいだね。」
仕事しろ裁判所。
流石にそう思わざるを得なかった。怪しいだけでなく、盗難ですら死刑なんて最早罪人全員を死刑にしてるのかと疑いたくなるところだ。ただ、少し彼の中で引っ掛かる単語があった。
「その……「組織重大機密コード」って何?」
「さあ?何かヤバそうな物ってぐらいの認識しかないけど…。」
「うっわ…すっげえアバウト…。」
「だったら自分で調べればいいじゃん。竜胆がさっきから持ってたその刀、多分それが組織重大機密コードだよ。」
「はぁ…………はぁ!?」
てっきり何かのカードやデータの話だと思い込んでいた竜胆は、想定外の事実に驚きを隠せなかった。まさか自分の隣の席に置いてある例の刀がそんなものだったとは……。
いや、正確にはそんなものも何も「組織重大機密コード」とやらが何か分からない以上、その刀がどんなものであるかも確かめる事は出来ないのだが。
「え、いや刀が機密コードって……ええ…?」
「別にそれが何かのコードな訳じゃないよ?あくまでそういう名称であるってだけ。だって名前からすぐに見た目とか使い道が連想できちゃったら警備的にダメでしょ?」
確かに納得のいく話だ。ただ、それで意図せぬ相手に盗まれていては目も当てられないが。
「…よく知ってるな。」
「まあ盗られる側の立場になって考えればすぐに分かる話だからね。一応、盗人ですし。」
「で、盗人って事は……この刀売るのか?」
「売りたいけどね~。買ってくれるところがないんだ。悲しいことに。」
まあ盗んだら死刑になる刀なんて買いたくないのが普通だ。自分だって買いたくない。
ん?死刑?
ここに来て彼の中で一つの疑問が生まれる。
「なあメイ。俺らって死刑宣告されたよな?」
「……そうだよ?どしたの?急に当たり前の事言って。」
グランド・ネセトは国ではない。
それは国民を持たないとも言い換える事が出来る。
「何でグランド・ネセトは、俺らの事を裁く事が出来るんだ?」
「………?」
彼の言わんとしている事が分からないのか、メイは不思議そうに頭を
「あー……例えばさ、メイはシー・ニャオの出身だろ?」
「うん。」
「でもってシー・ニャオの国民だろ?」
「うんうん。」
「だから本来なら有り得ないはずなんだよ。
国ですらないただの組織が、他の国の国民を裁くなんて。」
いくら国際的な組織とはいえ、無闇に人を裁く事が許されていい訳では無い。
少なくとも彼の生きていた時代なら許されていなかっただろう。
「うん……ン?
あー……そっかそっか。誤解が横行してるなー。」
竜胆の言わんとしている事を理解したメイ。
だが、彼の考え方は彼女から見れば「誤解」だという事らしい。
「確かに私はシー・ニャオの出身だし、国民だよ。でもだからといって国に権利を守ってもらえるとは限らないんだ。
特に、私みたいに法の裏側で生きるような人間はね。」
「いや、でも…!」
そこまで言いかけて、竜胆は口を
そうだ。ここは俺が生きていた時代より1000年も後の時代なんだ。価値観が変わってるのは当たり前なんだ。
そう自分に言い聞かせる。
「「でも」……何?」
「いや、何でもない。
………それよりさ、教えてくれないか?シー・ニャオについて。」
「……良いよ。
でも代わりに私にも教えてよ。」
「教えるって何を?」
「……竜胆についての事。」
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