フェイズ7 メイ&ルーシェ

「プハッ!…ゲホッ…ゲホッ!」


全身が痛い。身体中を殴られたような感触だ。それに頭が上手く回らない。苦しい。服がびしょ濡れで寒いのと気持ち悪い。風呂に入りたい。まだ1日も経っていない筈なのに普通の生活をしていた頃が、何年も前の事のように感じる。

むこうでは今何時だろう。このまま戻れなかったら部活の奴らはどう思うんだろうか。日曜の試合にも出られないな。授業も出ないと評価がまずいし…。

あー……クソッタレ。まさかこの年でホームシックになるとは思わなかった。

これでも大人になってるとは思ってたんだがなぁ……。


「おーい。目、覚めた?」

「……覚めた。色々と悪いな。あー……そうだ、名前聞いてなかった…。」


もう竜胆は彼女の事は疑う事は出来なかった。寧ろ感謝してもしきれないくらいの恩がある。


「メイ・ルーシェ。メイでいいけどね。それよりいつまで寝てるの?そろそろ行こ?」


まだ疲れは殆ど取れていなかったがこれ以上彼女を待たせるわけにはいかなかったので、痛む体にむち打って竜胆は立ち上がった。


「そういえば……ちょっと臭いね。」

「え、俺?」


竜胆は咄嗟に自分の体臭の事かと思ったが、実際には汚水に浸かっていたせいで2人とも恐ろしい悪臭を放っていた。



その後、彼等は着替えの調達も兼ねてメイの出身地である地下街に向かった。

竜胆は勝手な偏見でスラム街のような場所を想像していたが、そんな事はなかった。

街は巨大な地下ホールの中に建築されていて、それはいわば城下町のような構造をしていた。道中には中華風の建物が並び、料理店や雑貨店が立ち並んでいた。

その中で竜胆が特に驚いたのはこういった各地に点在する地下街同士を繋いだ地下鉄が存在するという事だった。メイ曰く昔使われていた線路を再利用しているらしい。


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