フェイズ6 ラン&フォール
「ちょっと爆弾とか聞いてないんだけど!」
「こっちの台詞だ!ってかあれから何分経った!?」
「知らないよ!数えてる暇ないし!」
彼等は今、廊下を疾走していた。
確かに考えてみればおかしい話ではない。脱走した人間が何処にいるのか分からないなら、船ごと爆発させてしまえばいい。
どう考えてもメリットにデメリットが見合ってないが。
「こっち!」
全速力の疾走を経て、2人は何とか船首甲板に辿り着いた。だが、さっきまで幸運な事が続いたように不幸な事も続いてしまうようで
「よっ。」
甲板の中央にあるコンテナ。その上に黒の看護服の彼女は立っていた。たった一つ違う点はその上に制服と思われる黒のコートを羽織っている事だ。
「あんた達には選択肢が3つある。1つ、ここで無抵抗で私達に捕まるか。2つ、無駄に抵抗して私達に殺されるか。3つ、ここで私達と心中するか。」
間違いない。あの時、死刑宣告をした女だ。
そして彼にとっては忘れたくても忘れられない顔でもある。
「私達って事は……どーせ他にも一杯いるんでしょ?」
周りを見ると何処から出てきたのか、武装兵が竜胆達を取り囲んでいた。
「うーわ、歓迎されてるね…。」
「これさ…詰んでないか?」
抵抗する術を持たない竜胆はすぐに手を挙げた。ただ焦って刀を手に握ったままだったので非常に間抜けな構図になってしまっていた。
「「動かないで。」」
隣からも前からも同じ言葉が聞こえたので一瞬、竜胆は戸惑ってしまったが、2人の言う通りにする事にした。
その時、何か機械が振動するような音が聞こえた。小学生の頃、電気ノコギリを使った時と似たような音だ。
でも何の音かは分からなかった。正面の彼女の方から聞こえるのだが、彼女はそれらしきものは持っていない。そして彼女は急に走り出すと共に周りの武装兵にジェスチャーで何かを伝えた。
すると周りの武装兵が銃の引き金に指をかけた。
どうやら捕まえるというのは最初から嘘だったようで、結局こんなに(後から考えればそこまでだった。)頑張っても死んでしまうのかと竜胆が
「うわぁぁあ!」
爆音と共に足元が崩れ落ちた。だが爆発のタイムリミットにはまだ時間がある。事実、船はまだその形を残していた。
つまり爆弾ではない何かが甲板を破壊したのだ。
だが、竜胆の中ではこれについての答えは既に出ていた。足元が崩れる直前、隣のメイが地面を殴ってるのが視界の端に映っていた。つまり彼女が船首甲板を破壊したという事だ。普通に考えれば有り得ない事だが。(それに、今はそれについて考えている暇はない。)
そしてそのまま竜胆は海に落下。勿論、彼だけでなく何人もの武装兵、そして大量の瓦礫も落ちて来た。
「(どこか…どこかに逃げないと!)」
この状況を打開する方法を探すため彼は今までにない位脳を回転させた。
陸に上がれば周りの武装兵に一瞬で蜂の巣にされるだろう。だがこうやったいつまでも水中にいる訳にもいかない。
その時、何かが彼の服を掴み、そのまま恐ろしいスピードで投げ飛ばした。そして想像以上の衝撃に彼はそのまま失神してしまった。
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