フェイズ4 ガール&ボーイ①

「ケホッゴホッ……うわっ、また蜘蛛の巣だ!きたねぇ!」

「……あのさ、静かにとは言ったけど、もうちょっとペース上げられない?」


彼女が通ってきたダクトの中を進む竜胆一行。しかしその進みは非常に遅く、進んでは止まってを繰り返していた。

その理由としては彼が匍匐前進ほふくぜんしんがここまでキツいものだとは思ってなかった事が挙げられるだろう。さらに思ってた以上に汚く狭いダクト。これも進みにくい一つの原因となっていた。


「悪い…。でもそんなに言うならそっちが前に行けば良かったんじゃないのか?」


そういうと彼女は顔をしかめた。竜胆の位置から見える訳がないのにそう思わせる程の雰囲気が彼女から漂っていた。

よくよく考えればこういったシチュエーションで男性が前で女性が後ろになるのは当たり前なのに、そこまで考えが及ばなかったのは彼の男子校3年目の経歴の成せる技だろうか。


「そこら辺は理解した上でこのポジションに納得したと思ってたんだけど…。」


ここに来てやっと竜胆も彼女の言わんとしていることを察したようで、必死に誤解を解こうと弁明するも


「……もういいよ、口だけじゃなくて腕も動かして。急がないと脱出した事がバレて本格的に警備が厳しくなるかもしれないしね。」


と素っ気ない返事をされてしまう。結局竜胆達は狭いダクト内を埃まみれで20分程 進む羽目になり、やっとの事で2人は廊下に辿たどり着いた。


「~ッツ…!いてててて…。」

「んっ…くぅ~……はぁ~。」


竜胆はともかく隣の彼女も20分間の匍匐前進はかなり効いたみたいで、思いっきり腕を背中の後ろに回して伸ばしている。


「で、ここからどこに行けばいいんだ?俺は地図とか知らないから道わかんないんだけど…。」

「多分、ここは船員居住区だから……貨物用エレベーターに行けば船首甲板せんしゅかんぱんに出られるはず。でもその前に回収したいものがあってね。先に倉庫に行かないと。」


彼女の事を初対面ではよく分からない人だと竜胆は思っていたが


「回収したいものって何だよ?」


今は怪しんでいる。さっきの事もあって疑心暗鬼になっているだけかも知れないが、どう見ても自分を連れていく理由がない。金も情報も持っていない。ましてや戦力にすらなりそうにない。いや、腐っても(元)運動部員だからおとりくらいにはなるかもしれないが。

どちらにせよそんな青年を連れていくメリットは彼女にない筈だ。だとすれば彼が彼女の目的に何か関係しているかもしれないが、これも分からない。


「手荷物と戦利品。こう見えて私盗人でね。ただ今回はへまをして捕まっちゃった。」


仮に彼女が自分を死刑にしようとしているグループの仲間なら、こんなことをするメリットはない。あのまま放っておけば自分は死刑になっていた筈だ。

だから彼はこの船を脱出するまでは


「分かった。一旦、その倉庫に向かおう。」


彼女を信用する事にした。

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