3-4
九十式戦車が二台、大通りを後退しつつ、目の前にいるロメルスに対して砲撃を繰り返していた。百二十ミリの戦車砲が轟音を立て発砲され、ロメルスに当たっているというのに装甲に傷つける事さえできていない。
「ふはは、逃げろ、逃げろ!」
ビームライフルを構え、銃口を二台の戦車へと向けている。
「つまんねぇよ、お前らは」
ためらわずに引き金を引くと、一閃の光が伸びていき、戦車の頭上すれすれを飛んでいく。だがしかし、高熱のためか、戦車の装甲がドロドロと溶解し始めた。弾丸に引火してか二台とも爆発炎上した。
「戦車じゃ張り合いがないっての! 魔法少女はまだ出てこないのか! 弱い者イジメっていうのは好きじゃないんだよ!」
ロメルス・ジャガータイプのコックピットの中で岡田三郎は吼えた。
コックピット内は、三百六十度カメラのおかげもあって、上と下以外ならば視界が開けている。今、視界の至るところで、黒い煙が上がっていた。
現時点で、この駐屯地に配備されていた九十式戦車のうち、半数近くが破壊され、この黒煙を原因となっている。十数名の自衛軍ももうすでに倒れており、被害は甚大であった。
「準備運動にもなりもしないぜ!」
ロメルスに搭載されている火器は、腕の部分に仕込まれている対空ミサイルがあり、対洗車用ミサイルは脚の部分に内蔵されている。
他にも、メトロニュウム合金製ナイフが二本、五十ミリパラペラム弾を使用するアサルトライフルと、炸裂弾を使用するショットガンであった。それとビームライフルがある。今回、三郎は持てうる限りの弾丸を持ち込んでいた。
「……他の敵はどこだ?」
全方位を見渡すが、敵の姿はなかった。だが、視線を元に戻したところで、ボンッと何かが装甲に当たり、爆発が起こった。
「うるさい!」
視界の隅に、建物の物影に隠れて対戦車バズーカを構えている一般兵の姿があった。
「そんなに死にたいのか!」
三郎はビームライフルをしまい、アサルトライフルをその兵士が隠れている建物に向かって発砲した。建物が崩壊し始め、その瓦礫が隠れていた兵士へと降り注ぐ。その兵士が恐怖で歪んだ顔をしたところまでしか見えなかった。
「死に急ぎすぎなんだ、弱いくせに」
その時だった。
『……三時の方向に質量増大を確認しました』
コックピットに備えつけられているスピーカーから、春日井さくらの声が流れてきた。
「……魔法少女か?」
三郎は喜びを隠しきれない様子でそう言った。
『その可能性が高いと思われます』
「よっしゃ!」
その言葉を聞いて、三郎はガッツポーズをした。
「岡田三郎、これより当初の目的を果たすべく戦いを挑む。データ収集犯、しっかりとやれよ」
誰にも見られていないのに三郎は敬礼し、そして、操縦桿を握る。
「行くぜ!」
ニヤリと不敵に笑い、ロメルスを発進させた。
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