第19話 亡き者の寝室
やることが終わった時、どっと疲れが俺を襲った。もう夕方か。
力仕事なんて普段しないからというのも理由の一つだったが、短期間とはいえお世話になり普通に話したりもした相手を埋めたことが、俺の精神を摩耗させた。作業中は疲れなど気にしないようにしていたけど、作業が終われば集中は途切れる。
「たかし……」
ルビオの声にぴっくりしてふり返る。いたのか。
俺は遺体を埋めた後、過労でかショックでなのかわからないが倒れてしまったルビーを家に運んで、なんとなくまた埋めた場所まで戻ってきていた。
「僕って駄目なやつだ」
「どうして」
酷く暗い表情をしてそんなことを言うルビオに驚く。
「前に、ルビーと話してみたけどさ。あんなことをした理由なにも教えてくれなかった。少しもだよ」
「……話しにくい理由でも、あるんじゃないか」
少し早口で話すルビオはの声は、悲しげだ。
「産まれてからずっと一緒だったのに、ルビーのことが少しも分からなくなっちゃった」
ルビオの大きな目に涙が溜まり、こぼれそうになる。悲しげな表情が、声が、目が、緩やかな風さえも悲しくする。
「ずっと一緒だったんだ。嬉しいことも楽しいことも苦しいことも悲しいことも、全部一緒だった。お互いの考えてることもいつだってなんとなく分かっていた」
まだ幼いルビオの声が、悲しげに揺れる。
「僕はずっとルビーと一緒に生きると思ってた。そうでなければ生きれないと思ったから。でも、ルビーは……僕にさえ理由を言わない」
こんなときになにも言えない俺は、本当にダメなやつだ。子供が今にも泣きそうになっているのに。助けたいとそう思っても、どうすれば助けることができるのかわからない。
「ルビーは僕を殺そうとし、理由は話してくれない。ルビーは僕と生きることを拒絶したんだ。じゃあ僕はどうすればいいの?」
夕日が少しずつ沈んでいって、それとともに夜が訪れようとする。色が闇に消え、生物は眠りにつき、静かな夜がやってくる。
……まるで、ルビオの小さな呟きを拾うためかのように。
「独りじゃ、生きてけないよ……」
俺はルビオをそっと抱き締める。まだまだ子供であるルビオは、抱き締めてみると、目で見るよりも小さく儚く感じた。
「もしよかったらだけどさ。俺と一緒に、王国へ向かわないか?ルビーも連れていって」
「……一緒に?」
きょとんとした表情で俺を見上げるルビオは、泣いている顔よりもずっと可愛く子供らしかった。
「ルビー、嫌がるんじゃない?」
「実はアクアさんから一緒に行ったらどうかって言われてたんだ。ルビーはアクアさんのいうことなら素直に聞くだろ」
そういうと、ルビオは少しだけ笑ってくれた。
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