第17話 二人が心配

「……大丈夫かな」


 つい先程ルビーと話をしてくると言ってルビオは家に行ってしまった。その間俺は暇なのだが、杖はルビオが歩くために必要なので手元にないし、魔法の練習もできない。

 正直二人がとても心配なのだが、できることもなければやることもなく暇。


「……本当に大丈夫かなあ」


 そう一人で呟きながら、石を川に向かって投げてみる。残念ながら石は水面を跳ねることなく沈んでいった。

 二人は元々はとても仲のいい兄弟だったとはいえ、今では加害者と被害者である。二人で話した結果この現状がどう変わるのかは、想像もできない。どういう話をするつもりなのかわからないし、ルビーがルビオを殺そうとした理由だってわからないのだ。


(心配なのは、ルビーがまたルビオに危害を加えようとする可能性)


 アクアさんがああなってしまったので、さすがに反省しているとは思うのだが……。俺はルビーがどんなやつなのか、あんまり知らないし、その可能性がないとは言いきれなかった。


(……ちょっと様子でも見に行くかな)


 数秒迷い、様子を見に行くことにする。完全なるお節介なのかもしれないが、心配でじっとしていられなかった。ここから家はそう遠くないので、しばらく歩けばすぐに家が見えてくる。

 俺は家の扉をそっと開け、中に人がいないか首だけ中に入れて確認した。別にやましいことをしている訳じゃないのだが、なんとなくこんなことをしている。どうやら二人は別の部屋で話しているらしい。


(……今の俺、まるで泥棒みたいだ)


 そう思いながら忍び歩きで、扉に耳を当てて二人のいる部屋を特定しようとする。するとすぐに声がよく聞こえる部屋が見つかった。きっとここに二人がいる。

 でも今入っていくのは気まずいし、二人も話をしずらくなりそうなので、扉に耳を当てて会話を聞くことにする。大丈夫そうだとわかればすぐやめるつもりだ。


「ルビーは……」

「ルビオちょっと待つんだぞ」


 ルビーは声量を押さえてそう言う。なにかあったんだろうか?


「おい、扉の前にいるお前は誰なんだぞ」

「えっ、まさかルビー、泥棒がきたんじゃ……」


 扉の前にいるお前?

 ……それ俺じゃん!!


「ご、ごめん俺だよ。ちょっと心配で……」


 なぜか速効で盗み聞きがバレたことに落ち込みつつ、扉を開けて正体をあかす。すると二人はあからさまに安堵した。


「びっくりしたぞ……」

「若干怖かったんだけど……。たかし、暇ならご飯を作っておいてよ」


 ルビオがいつになく辛辣だった。話を邪魔したからだろう。ごめんと言って俺は言われた通りご飯をつくることにした。

 ……とりあえず大丈夫そうに見えたし、まあいいか。

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