第14話 会話などない
あれからアクアさんは寝たきりになってしまい、病気と怪我はどんどん悪くなる一方だ。起きてもずっとボーッとして言葉を話さなかった。
町は遠いし、ルビオもルビーも馬を動かせる状態ではないし、そもそも子供が馬で怪我人を運ぶことができるのかといえば、無理な気がする。馬車があればよかったのだが、ないものはないのだ。
当初ルビーはルビオを毒殺する予定だったが、ルビオが毒で死にきらなかったためあんな行動にでたらしい。お墓をつくるためにわざわざ帰ってきた所で殺そうとしたと言っていた。
ルビオは毒の後遺症で左腕と左脚が使えなくなった。左半身がマヒしてしまったのかもしれない。まだなにがあったのか説明していないが、聡明なルビオは俺達の様子を見てただ黙っていてくれた。
あれからルビーはアクアさんの看病をつきっきりでするようになった。ルビーは何も言わず動物を狩ってきて、俺は黙々と家事をした。
(食欲がない)
料理を作りながら思うのは、そんなことだ。
きっとルビオもルビーも同じで、食欲などないだろう。でも食べなければ死んでしまう。生き物とは面倒なもので、どんなに辛くて悲しくて苦しくても食欲がなくても、食べなければいつか死んでしまう。
でも食欲がないことにかわりはないので、こってりした料理は避ける。食べやすいのがいい。
(アクアさんは、いつ目を覚ますだろうか)
それとも、もう覚まさないのだろうか。
ルビーはどうしてあんなことしたのだろうか……。
(二人は仲がよかったのに)
ルビーがルビオのことを嫌っているようには見えなかったのに。ルビオよりずっと俺の方が嫌われていたのに。どうしてあんなこと。
ルビーはルビオのこと殺そうとしたことを後悔してるみたいだけど、それはアクアさんを傷つけてしまったから?それとも、まだルビオを家族として愛しているから?
ルビーは何を考えているのだろう。
(それに、ルビオになんて言えばいいんだよ)
ルビオになにがあったのか説明するなら、それは多分俺がしなければならないだろう。ルビーの口から説明させるのは双方にとって辛いことだろうし、ルビーは冷静にしっかりと説明できないだろう。俺もしっかりと冷静に話す自信はないが、きっと幾分かはマシだ。
「……あ」
考え事をしてたらパンが少し焦げてしまった。
ただえさえ落ち込んだ気分がズウンと沈む。トドメをさされたような気分だ。
「はぁ……」
ため息をついて、パンの焦げた部分を削る。もったいないけど美味しくないし、体に悪いからしょうがない。
スープを二つのお皿に盛って、削れて見た目の悪くなったパンと一緒にルビーのもとへ運ぶ。片方は、アクアさんの分だ。ルビーが食べさせるだろう。
「入るよ」
一応声をかけて部屋に入る。入ると、ルビーもアクアさんも寝ていた。食事はテーブルに置き、ルビーに毛布をかけて、部屋から出た。
……今日こそはルビオに説明しよう。
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