第8話 ちょっと病気がちらしい


「おい、夕飯つくるから練習はおしまいだぞ」

「うおっ、いつの間にいたんだ!?」

「ルビーは少し前から練習を見学してたよ」


 まじか。魔法に夢中で気がつかなかった。さっさと歩いてくルビーについていって家に向かう。


 魔法は少し上達した。酸欠のような状態になり体調が悪くなるのは、体が魔力不足になったせいらしく、魔力の量を調整すれば解決できる問題だった。それに、木を少し焦がすことができた。

 でも、俺のファイアーボールはまだ5歳がうてる程度の威力しかないらしい。そう言われて落ち込むとルビオは「たかしは才能あるから伸びるよ」と言ってくれた。地道に頑張ろう。


「今日はいい獲物がとれたから、ステーキにするぞ」

「おーいいね!あ、たかしは練習で疲れてるだろうし、休んでていいよ」

「ありがとう。お言葉に甘えるよ」


 料理や掃除などはいつも手伝っていたのだが(ルビーに家事くらいしろと怒られるので)さすがに今日は疲れてるので、休めるのはありがたい。

 ルビーは家事もするし狩りもするし本当にすごい。ルビオも俺の魔法の練習に付き合いつつ、山菜をとったり家事をしたりしている。俺は魔法の練習でぐったりだというのに。アクアさんは病気であまり家事とかはできないらしい。でもせめて洗濯だけは、と言って洗濯はしてくれている。

 この家族はすごい人ばかりだ。俺も見習って、元の場所に戻れたらもっとしっかりしないとな。しかし日本に帰れるのはいつになるのか……。


「おいたかし、ごはんができたぞ」

「おう、ありがとう……あれ、アクアさんは?」


 いつものルビーなら真っ先にアクアさんを呼んで、俺はついでなのに。ルビオは食事をテーブルに運んでいるのでルビオが呼びに行っているわけではない。


「たかし、寒いと言っていたよね」

「今日みたいに魔力が濃いと、魔法適正のあるものは影響がでるんだ。かあさまは病気で体が弱いからこういう日はいつも寝込んでるぞ」

「ルビーが半袖なのは……」


 そう言うとルビーは肩をすくめた。


「ルビーは剣の方が向いているんだぞ」


 さっきの俺は少し無神経だっただろうか。だからと言って謝るのはルビーの誇りを傷つけることになりそうで「そっか」とだけ言った。

 それにしても、今日俺が寒いと感じたのは、魔力が濃いせいだったのか。魔法適正があってもいいことばかりじゃないな。俺は寒いのが苦手だから特にそう思うよ……。


「「「いただきます」」」


 手を合わせて三人でちゃんと挨拶をしてから、いつも通りにごはんを食べる。

 でも二人はアクアさんのことが心配なのか、いつもよりもおとなしく、あまり量を食べなかった。アクアさんは一体どういう病気なのだろうか……。


 しかしアクアさんは翌日にはすっかり元気になっていて、二人と俺の心配をいい意味で裏切ってくれた。

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