第5話 お世話になります
食事が終わって、話の続きをすることになったんだが、なんだかもう何も考えずにここに永住したくなってきた。アクアさんは美しいし、ルビオは可愛いし、退屈でただストレスを感じるだけの高校生活よりもずっと楽しいもの。いや、でもルビーに睨まれ続けるのは辛いな……。
アクアさんに異世界人だと紹介されればルビオには色々教えてくれると言われた。異世界人はたまにこの世界にくるらしい。異世界というのはまだ信じられないけど、とりあえず異世界にいる気持ちくらいにはなっておくことにした。
「元の場所に帰るのならば、北の魔人に方法を聞くしかありませんね……だいぶ遠い所にいますけど」
「俺多分、この森ぬける前に死んじゃう気がします……」
交通費とかかかるなら困るし、体力ないので遠くまで歩き続けられるとは思わないし、こんな森で、食事はどうすればいいのやら。動物とかもいるだろうし。ここが異世界だろうとなんだろうと、俺には森の中で生きる術はない。どうすればいいんだ。
「とりあえず、解決策が見つかるまでここにいますか?私は構いませんよ」
「いいんですか?」
それは助かる。このまま森へ放り出されたらそのうち腹が減って毒キノコを食べて死んじゃうだろうから。方向感覚もないので行きたい所に行けるとも限らないし。
でも、ここで気になるのはずっと俺を睨んでいるルビーの存在だ。ここまで警戒しているのに、ずっとではないとはいえ同居するのを了解するとは思えない。
「こんな怪しいやつと一緒の家だなんて嫌だぞ」
ほら、やっぱり。
予想が当たったけど全然嬉しくない。
「ルビー、たかし良い人だと思うよ?ごはん美味しそうに食べてくれたし」
「ルビオは素直すぎるんだぞ!」
見た目は似ているが双子の意見は全く似ていないな。でもごはんを美味しそうに食べたから良い人だと思う、というのはどうなのか。それだと割と誰でもいい人になれるけど……。
アクアさんの顔を見ると、困ったような笑顔をうかべていた。
「ルビーは人一倍警戒心が強いだけですから。どうかあまり気にしないで下さい」
「ええ、大丈夫です。すみません……しばらくここにいさせてもらいます」
「やったー!」
「ルビオ、喜ぶんじゃないぞ!」
なぜだかルビオには懐かれているらしい。確かにルビオは素直すぎるのかもしれないな。ルビーは警戒心強すぎるので、二人の性格を足して割ればちょうどいいのではないだろうか。
「いいかたかし、かあさまが許してもルビーは許さないぞ!」
「そ、そっかごめんね」
睨み続けるルビーに、俺はあやまるしかできなかった。情けない。
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