第3話 なんかあっさり誤解とけた
「まあ、なにをやっているの?」
ルビオとルビーの喧嘩に巻き込まれてなぜか二人に怒られ、収拾がつかなくなって困っていると、水のように透き通った美しい声が聞こえてきて、それはまるで俺達を包み込むように優しく母に抱かれる赤子のような安心感を感じられる。
「あっかあさま!泥棒つかまえたよ」
「ルビオじゃなくてルビーが捕まえたんだぞ」
「あの、泥棒っていうのは誤解なんです……」
いまだに泥棒扱いされ慌てて訂正する。
かあさまと呼ばれる女性は声でなく見た目まで美しく、髪は長い空色で地に座れば地面に毛先がつくほどだった。座った女性は縛られた俺に赤い目をむけ、優しく微笑んだ。
空色に赤い目だなんて珍しい。カラコン?髪は染めてるのか?いや、まつ毛まで空色なんだがまつげって染められるの?
「ええ、わかりますよ。ルビオ、ルビー、ちゃんと彼に謝りなさい」
「ごめんなさい」
「かあさまが言うなら謝ってやらんこともないぞ……ごめんなさい」
ルビオは素直に、ルビーは不服そうにあやまり、二人は女性に言われるでもなく俺の縄をといた。
「私からも、ごめんなさいね。ところであなたはどうしてこのような場所にいるのですか?」
柔らかい笑みに、警戒がにじみ出ている。どうやら泥棒ではないことは分かってもらえたようだが、怪しい人物ではあるみたい。そりゃ裸足でパジャマ姿の男子高校生が森にいるって、怪しいか。というかなんかの事件に巻き込まれた人だと思われそう。
「いやあ、ちょっと迷ってしまいまして。自分でもなんでこんな所にいるのかわからないんです」
「かあさま、たかしはやっぱり泥棒だぞ」
「ルビーは黙ってなさい。その話を詳しく聞きたいわ。よければ私たちの家でお食事をしませんか?」
行くあてのない俺がここで誘いを断ったら、森で迷って死ぬしかない気がする。それにお腹も空いていたので、頷くことで俺の意思を伝えた。歩いて家まで移動することになったが、ルビーはずっと俺を警戒していて、ルビオに話しかけられても俺を睨み続けた。確かに怪しいかもしれないけどそこまで疑われるとちょっと悲しい。
しばらくして、大きなログハウスについた。中の家具もほとんど木製であたたかみのある、なかなかいい雰囲気の家だ。
「そちらにおかけになって下さい。二人は食事の準備をしてくれるかしら」
「「はーい!」」
椅子を掌でさされ、素直に座ると女性は向かいの席に座った。女性に指示され、ルビオとルビーは元気よくキッチンへ向かった。
「はじめまして。私はアクアです」
「俺は田中たなか高志たかしです」
見れば見るほど美しい女性だ。アクアさんの赤い瞳に射抜かれて、照れちゃう。
「よろしければ、ここにくる前の話を私にお教え頂けませんか?」
アクアさんはどうしてか、その話が気になったらしい。どこから話すべきか悩みながら、東京にいたことなど、目が覚めたら森にいたことなどの話をすることにした。
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