第2話 双子に確保された
「捕まえたぞ泥棒!」
「いつもいつも迷惑してたんだぞ!」
なんだなんだ急に!
まだ幼い子供の怒った声が聞こえるが、それどころじゃない。急に押し倒されたものだから、思い切り尻を木の根にぶつけてしまってめちゃくちゃ痛いのだ。
「かあさまが帰ってきたら報告だ」
「それまでは縛っておくぞ」
急な展開に目を回していると、あっという間に二人の手によって縄でぐるぐるにされてしまった。まてまて、俺は泥棒じゃない。せめて話を聞いてから縛ってくれよ。
「おい、なにすんだよ!」
「お前が泥棒だから捕まえただけだ」
「でもかあさまは優しいから殺さないでやるぞ」
完璧に誤解だ。泥棒ってなんだよ、ここに盗む物なんてあるのか?木や花とか、それぐらいしかここらへんにはないんだが。もしかしてここらへんに咲いてる花が貴重なのか?その割には大量に咲き誇ってるぞ。
しかも殺さないでやるって、なんだか物騒な子供だな。
「泥棒じゃなくて、俺はただの通りすがりの人。名前は田中たなか高志たかしだ」
「たかしは泥棒じゃないのか?」
「嘘に決まってるぞ!騙されるなよルビオ」
赤目の方は話せば通じそうだが、茶色い目の方は敵意まるだしだ。今だってめちゃくちゃ俺を睨んでいる。そんな睨まれるとへこむな。
(というかいきなり呼び捨てにされた……)
それにしても二人はとても顔が似ている。服も似ているし、声も同じように聞こえるし髪も二人ともショートで、もしも目の色が同じだったら見分けるのが難しいかもしれない。双子なんだろうなあ。
あ、でも茶色い目の方は少し胸がある。女の子?
で、赤目の方は男の子かな?
「お前らは、何なんだ?」
「僕はルビオだよ!こっちはルビー」
「泥棒に名前を教えるなよルビオ。かあさまにイタズラをチクるぞ」
……どちらかというとルビーという名前は赤目のルビオの方が合ってる気がするが。
ルビオが「なんだと!」と言うと、ルビーと喧嘩を始めてしまう。取っ組み合い、低レベルな口喧嘩は子供らしくてとても微笑ましいのだが、俺はこのまま放置なの?
子供と言っても、小学5年生くらいに見えるので、歳の割にはレベルの低い喧嘩だ。
それにしても、ルビオとルビーという名前だしもしかして外国人か?顔も日本人離れしているけど、日本語はペラペラだからずっと日本に住んでんのかな?
ルビオの真っ赤な目も珍しいな。髪は茶色だし顔もそんなに白くないのでアルビノってわけでもなさそうだ。もしかしてカラコンだろうか。まだ子供なのに?
「「たかし、どっちが悪いと思う!?」」
考え事をしていて、二人が一体何が悪いという話をしているのか聞いていなかったので答えようがない。
「えっと、ごめんね。聞いてなかったよ」
そう素直に言うと、一瞬の沈黙の後に二人に「聞いとけバカ!」と罵られてしまった。元気なのはいいのだが、そろそろ泥棒という誤解をときたいなあ……。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます