パンツはいちご柄じゃない! 四枚目
一気に薄着の生徒が増えた。ついこの間まではぽかぽかとした春の陽気だったのだが、今週から急激に気温が上がるらしい。もう既に今日から夏模様だ。
「やっぱ上着暑いなー……」
昼休み、俺のクラスまで来てくれた誠吾くんといつも通りだべっていた。だるそうにブレザーを脱いだ誠吾くんに、少し違和感を覚えた。
「誠吾くん、具合悪い?」
妙に前屈みで、身体を縮こませている。この暑さでやられたのだろうか。心なしか顔も赤い気がする。
「いや、大丈夫。気にすんな」
大丈夫と口では言っているものの、無理をしていたら大変だ。保健室に連れていこうと背中にそっと触れる。
「!……誠吾くん、これ……!」
俺の手が背中に触れた途端、誠吾くんの体がビクリと跳ねた。指先に伝わる硬い感触、シャツにうっすら浮き出た筋。
これは……確実にアレだ!
それの存在を認識した途端、胸に火がついた。
「……保健室行こう!」
誠吾くんが脱いだブレザーを肩にかけ直し、腕を引っ張って保健室へ向かう。本人は恥ずかしそうに胸元を隠しながら黙って付いてくる。そんな健気な姿にも昂奮した。
コンコン
「失礼します。1年C組の郡大和です。体調不良の生徒がいるので、ベッドを使用しても宜しいでしょうか」
大胆に開け放たれた窓から、生ぬるい風が入ってくる。我が校の養護教諭は、珍しく男性だ。保険の先生といわれて想像するような人物とはかけ離れている。黒縁の眼鏡の奥は、常に無表情で冷ややかだ。声は低く、背は高い。一部の生徒からは恐れられ、一部の女子生徒からは支持されている。
「あぁ、いいよ。暑さで体調を崩したのか」
所々錆びた椅子をギィと鳴らし、こちらを向いた。窓からの逆光で、おぞましい雰囲気を放っている様にみえた。
「一応、熱を測りなさい。吐き気は?水分摂ってた?」
俯いたままの誠吾くんを気遣いながら、体温計を受け取る。
「気持ち悪いそうです。水分は……あまり摂っていませんでした。エアコンがついてればまだ良かったんですけど……」
食い気味に質問してくる先生に、俺もひとつひとつ答えていく。何故だか、先生方にエアコンをつけて欲しいとお願いしてみても却下されてしまう。教員間でのルールがあるのだろうが、皆困っているのだ。
「そうか、他の先生に報告しておく。窓側のベッドを使え。私は職員室に行ってくる。ここだけでもエアコンの使用許可を貰って来ねば……」
「ありがとうございます」
なかなか生徒思いな先生なのかもしれない。噂に聞くよりも優しくて良い先生だ。言葉は冷たいけれど。
先生が出ていった保健室は、誠吾くんと俺だけになった。
「……よくもまぁスルスルと嘘をつけるな……」
空気を読んでか具合が悪そうにしていた誠吾くんが、通常の姿勢に戻った。
「まあね」
誠吾くんの呟きを軽くあしらい、ベッドへ連れていく。特に嫌がる素振りも見せず、大人しく従う姿に胸が高鳴った。
「大和、何すんんっ……!」
俺に背中を向けていた誠吾くんを無理矢理向き直らせ、強引にキスをした。俺に、舌を入れる度胸は無い。それでも、この気持ちが伝わってくれるように、何度も何度も唇を重ねる。
「……ねぇ、見せて」
開いている窓は気にもせず、シャツのボタンの間に指を滑り込ませる。誰にも触れられたことがないような百合色の肌は、仄かに赤く染まっていく。暑さで滲む汗すら愛おしいと思える。
体と体をあてがい、ベッドへと流れこんでいく。もちろん誠吾くんが下になって。
「大和……こんなとこで……っ」
そうは言いながらも素直に体をまさぐらせてくれるのだから、俺は構わずボタンを外していく。でも、誠吾くんの体にも触れていたいジレンマに陥る。
第二ボタンを外したところで、堪らず誠吾くんの首筋を口で愛撫した。
「あっ……」
甘く零れた嬌声を、掬い上げるようにして舌を動かす。俺の舌に合わせ反応する体が可愛くて仕方がない。
「誠吾くん、自分で脱いでよ。可愛くて敏感な君の肌を愛でるのに忙しいから」
首筋に唇を押し当てたまま注文した。じわじわと息が荒くなってきた誠吾くんは、反抗する素振りなど見せない。恥じらいで紅潮させた体を起こし、自らのボタンに手をかけた。
「ちゃんと……見てよ……?」
恥ずかしいくせに、妙なところで積極的だ。上目遣いで俺の瞳を捉え、肩を擦り寄せてくる。それに応えようと俺もうなじに手をかけた。
「誠吾くんしか見えないよ」
自分でも、トレンディドラマみたいな言葉が出てくるなんて思わなかった。けれどそれは本心だ。目移りだなんてしないし、できない。もう、誠吾くんの魅力に囚われているんだから。
いつも男らしい仕草の誠吾くんは、キスしたり体を触ったりすると、急に女の子らしくなる。俗に言う女の子座りで、肩を窄ませ、妖艶な空気を纏う。ボタンを外す指は、どんな屈強な男でさえも劣情を煽られ、緩む口元は、今すぐ吸い付いてしまいたいと思う。
「やまとっ、オレ……似合ってる……?」
自分の手によって晒されていく秘密を、誠吾くんはどう思っているのだろうか。はだけた白いシャツを左右に開き、彼の秘密は露になった。紅く染まる体を捩らせて羞恥に悶えている。
誠吾くんの胸元にあるのは、パステルピンクのブラジャーだ。真ん中にはサテン生地のリボンが縫い付けられていて、体の曲線に沿うようにレースがあしらわれている。
本来、女性の胸を包むために作られたそれは、誠吾くんの平らな胸を更に強調しているように見えた。カップと胸板の間にできている隙間に、吸い込まれそうなほど魅力を感じる。思わず、手を差し込んでしまいそうなほど。いや、思わず手を差し込んでしまった。
「あっ!まて、いやっ、やまとぉ……!」
「可愛い。なんで?なんで着けてきたの?」
目尻に涙を浮かべる誠吾くんに構わず、胸を撫で回す。両胸に付いた小さな蕾は、まだ春の新芽のように柔らかい。
「ねぇ、答えて。答えられるでしょ?誠吾くん」
熱くなる体を寄せ合いながら、俺は誠吾くんの耳元で囁き続ける。
「やまとにっ……見て、もらいたかったから……!」
「よく出来ました」
首筋から耳へ、耳から鎖骨へ目標を変え、弄り倒していく。喉仏の真下の窪みから、右へ左へ、甲斐甲斐しく汗を舐めとる。
「……っん……んん!……っ」
喘ぎ声ともとれる官能的な声を漏らす彼に、俺はさらに欲情した。胸を愛撫する左手は変わらず、右手を鳩尾に当てて擦り始める。鳩尾を擦る手は、やがて腹へ移動し、腰へと移っていく。
「ひ……う、ん……っあ……!」
堪えきれていない喜悦の声を保健室中に響かせるのが心地よくて、口を塞ぐことはしない。誠吾くんをこんな淫らにしているのは俺なのだと実感する。そして、もっと啼かせたいと思うのだ。
「あ……!おい、やまとっ!ん、あ、あ、あ!」
右手はいつの間にか太腿に移動し、スカートの中へと指を進める。女子高生痴漢モノのAVよりも、ずっとリアルで、ずっと興奮する。
気持ち良さそうに悦がる誠吾くんを見ていると、俺も淫猥な気分を催す。
内腿を撫で回し、誠吾くんの秘部へ、指が触れ……
ガチャ
「センセー、だるーい。サボらせ……て……」
五秒くらい、世界が止まったかと思った。
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