パンツはいちご柄じゃない! 二枚目
「誠吾くんは休みの日も……その……女の子なの?」
三日前、ラッキーなスケベから付き合うことになった。この可愛い女の子と。……女の子……女の子…………いや、男の娘、っていうのかな。
俺の彼女になった
「っはは!女の子って、オレは女になりたいわけじゃないから。あと、『女装』って言っても大丈夫だよ。別に何とも思わないから」
誠吾くんにはお見通しなのかもしれない。なんで思っていることが分かるの、なんて聞いたらきっと、彼女だから、とか言うんだろう。ニッと笑って。
「そっか……って!そうじゃなくて、話を逸らさないでよ〜!」
誠吾くんは俺よりもずっと大人で、妖艶だ。仕草の一つ一つに目が引き付けられる。しかし照れ屋でうぶなのだ。脚を組み替える仕草も、細い髪を耳に掛けるのも無意識だろう。
この三日間でさらに誠吾くんを好きになった。
「バーレちった!」
組んでいた脚を八の字にぴんと伸ばし、口を大きく開けて笑った。しかしすぐに席を立ち、俺の机に身を乗り出してくる。周りから見たら、キスでもしているんじゃないかと思われてしまいそうな近さだ。
「明日、デートしてみる?」
全身の毛が逆立つようなくすぐったい感覚に襲われる。思わず閉じた瞼をそろそろと開くと、頬を染めて目を逸らす誠吾くんがいた。
「か、可愛い……!」
もしかして、これが萌えるって感じなのかな。少年誌のラブコメは好きだけど、ヒロインを好きになったことは無かった。けど、誠吾くんはラブコメヒロインよりもずっと可愛い。
ボッと火を吹くように赤くなった誠吾くんは、小さな声で呟いた。
「デ、デートは行くの?行かないの?」
……これは……激萌えだ……。
「行く!もちろん行くよ!」
誠吾くんの両手を取って、固く握りしめた。そうしたら、恥ずかしそうに俺の目を見て笑ってくれた。
「やった」
「っう〜……最高に可愛い……」
思わず涙が出そうなくらい可愛かった。今の笑顔は、脳内ファイルに保存して五十枚くらい現像したい。
でもそんなことできる筈ないから、今は、精一杯抱きしめた。
「なんだよ〜!ま、また照れるじゃんか〜!」
「あ、
土曜日の朝、休日で浮かれた雰囲気の駅前で苗字を呼ばれた。可愛い可愛い俺の彼女だ。待ち合わせ場所を詳しく決めていなかったから少し手間取ってしまったが、お互いを探し合っているところで合流できた。待った?今来たとこ、なんて会話ができなくて残念だが、パタパタと駆けてくる誠吾くんが可愛いから、そんなことどうでもよくなる。
「良かった。ちゃんと会えた」
スカートを春風に揺らされながら微笑む彼は、さながら天使のようだ。そのスカートは思いのほか長めで、春らしいオレンジのストライプが入っている。二の腕部分が丸く膨らんだデザインのトップスには、控えめなフリルがあしらわれていて可愛い。
こういうのって、短めのワンピースでパーカーを羽織ってるって感じだと思ってた。でも実際に着てきたのはファッション誌に載っているようなオシャレなコーディネートだ。ラブコメのヒロインってセンスないんだなぁ。
「おはよう。やっぱり、制服とは雰囲気が違うね」
妙にリアルな服装に、少しドキドキする。
「あれ?女装してくるかなんて分からなかったくせに、なんだよ、その反応は」
片眉をピクリと上げ、不思議そうな顔をした。
「あ、あー。誠吾くんがスカート以外を着てる姿が想像できなくて……」
それに、きっと男の格好は嫌いだろうから。
手をうなじにまわしてバツが悪そうに答えた。
「う、なんか見透かされてるみたいだ。とりあえず……どこに行く?」
むず痒そうな表情を浮かべ、一度俺に背を向けた。しかし、手を後ろで組み、幼気な笑顔で振り返った彼はとても楽しそうだった。
「誠吾くんが行きたい所」
俺も釣られて笑顔になる。
「うわ、彼氏っぽーい!じゃ、お言葉に甘えて!」
俺の手を取って、指を絡めてくれた。先をズンズン進む誠吾くんの耳が赤くなっているから、きっと勇気を出して手を繋いでくれたんだろうな。また釣られて、俺も照れてしまいそうだ。
誠吾くんは、俺とどこに行きたいんだろう。誠吾くんとならどこでも楽しめると思う。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます