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「まぁこうやってマサオの世話を出来ているから、元気でいれられるのかもしれないけどね」
「マサオのお世話は相葉さんがされているんですか?」
そう言われればマサオを散歩させているのはいつも相葉さんな気がする。息子さんが散歩させているのを見た事がないかも。
「そうだよ、私が連れて来たからね。だからマサオの世話は全部しているよ」
「わぁそうなんですね」
「まさかこんな年になって犬を飼うことになるとは思っていなかったけどね、出会ってしまったから」
「どこで出会われたんですか?」
「河原だよ」
「河原?」
「迷子になっていたんだ。とても小さくて汚い子犬がふらふらと歩いていてね」
マサオは散歩が中断されたことに気付いたのか、その場に突っ伏して目を瞑っていた。
「ガリガリに痩せていて、皮膚も病気になっていて。それでも懸命に生きていて。このままじゃ死ぬ運命しかないと思ったら腕に抱えていたんだ」
「そんなことが」
「息子にも怒られたけどね、そのまま放っておくなんてとてもじゃないが出来なかった。世界中の生き物を救う事は出来ないけれど、目の前のこの子だけは守りたいって思ったんだ」
相葉さんの言葉を聞いて思う。俺はとっさにその判断が出来るだろうか。見て見ぬふりをしないだろうか。きっと相葉さんのようには行動出来ないと思う。
「犬を飼うなんて大昔に経験した以来だったから、最初は大変だったけどね。気付いたらもういい友達さ。最近はマサオが散歩してくれるみたいで」
「ふふふ、素敵ですね」
「そうかい? まぁマサオが居てくれるから毎日退屈しないよ」
歩き出すことが分かったのかマサオはシュッと立ち上がって、クリクリした瞳で相葉さんを見つめる。
「それじゃぁね、お仕事頑張って」
「ありがとうございます。お気をつけて」
俺にはまだ相葉さんみたいにはなれないけれど、いつかあんな風になれたらと思わずにはいられない。
「格好いいなぁ」
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