生きている覚悟


「なるほど。兄上に未来では殺さずに物事が治まると話したと。」結局ばたばたしている中邪魔にならないように部屋に居たら隆元様と話した後の隆景様が部屋まで来てくださった。世間話をしていたが、誅殺のことに触れると隆元様と何を話したのかと聞かれ伝えた。

「私余計な事を言ってしまったのでしょうか。未来は未来、この世はこの世なのに…。」

「別に兄上は気にしていないと思いますよ。それよりも―――」

 隆景様はふと目を細め

「初めてこのような騒動に巻き込まれて、さぞかし怖かったことでしょう。」と柔らかい声で言った。

 怖い?意識すらしなかった。でも、今やっと私が今まで本で読んできた歴史の中にいて、私が居た世の中よりも死が近い世界に居ると気が付いた。

「余計な事を言いました。思慮が足りていなかった。」と目を伏せる隆景様にすかさず

「そんなことないです。私、どこかで現実にそっくりな夢だと思っていました。」と言う。

「夢?」

「この世界は私の想像で、未来から来たなんて言うのも幻想だと。でも今回の事でわかりました。私はここで生きているのですね。」

「はい。」

「隆景様は私が怖かったのではないかと仰ってましたね。」

「はい。戦のない世界から来た貴方が粛清を直接見ていなくてもこのような中に居たら怖かっただろうと。」

「私は怖いというより、しっかりしないとと思いました。私はここで生きていて、ここで生きていく。その覚悟を決めないといけないと腹を括りました。」

 隆景様はまた目を細め

「死なないで未来に帰ることが貴方の最大の使命です。忘れないで下さい。」と言い残し戻っていった。


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