大殿と兄弟達


「父上、失礼したします。」

「入れ。なぁ隆元、雫殿はええ子じゃの。そこでお主の元ではなく儂の元で暮らさせようと思うんじゃが…」

「父上の元でですか?」

「当主であるお主の元だと家臣の反対側強かろう。」

「しかし…っ」

「失礼します!殿、大殿、今よろしいでしょうか?」

外から声が聞こえる。

誰だろう

「隆家か、入れ。」

「はっ!」

隆家…宍戸隆家様のことかな?

元就公の次女を嫁にもらい毛利家の一門となった人だ。

確か毛利家十八将筆頭格のはず。

「妻が久しぶりにお二人に会いたいと申すもので連れて参りましたが、今はお忙しいようなので後にいたしましょう。」

「いや隆家、姫を連れてこい」

「はっ!」

姫…元就公の次女の五龍局様のことだと思う。

「父上!兄上!」

入ってきたのはとても可愛らしい女の子目が合い不思議な顔をされる

「この女子はどなたです?」

「儂の新しい娘じゃ、お主の妹じゃの~」

「養女ですか、どこの家の者ですか?」と隆家様も入ってくる

「そうじゃのぉ~隆元が拾ってきたから身分不明じゃ(笑)」

「大殿っっ!!そのような者を養女になど…何かあったらどうするのですか!

殿までそのような者を拾ってきて…」

うぅ…

隆家様の言葉が正論すぎて顔を上げてられない…

「隆家、この者のこと儂も気に入った。

だから儂の元に住ませようと思う。」

「殿っ!」

「隆家は心配しすぎじゃ~」

これが普通の反応だと私も思いますよ、元就公…

「父上に確かに何かあっては困る故儂の元で暮らさせる方がええじゃろ。」

「しかし…」

「いいじゃないの!兄上の元なら安心でしょ?」

「姫…」

「この子悪い子じゃなさそうだし!」

と近くに来られる

姫様近い!近い!

「名はなんというのじゃ?」

「岡田雫です。」

「雫ちゃんよろしくお願いしますの!

私は五龍局と呼ばれておるから五龍って呼んでね!」

「五龍…さん。」

「なんか妹なのによそよそしいから、五龍おねぇちゃんで!」

「五龍おねぇちゃん…」

「この人は私の旦那の宍戸隆家。」

「毛利家十八将筆頭格の五龍城に住んでいる宍戸隆家様ですよね?」

「なぜ儂のことを…」

「まぁええじゃないか隆家~」

「…ところで殿の元で暮らすとなると尾崎局様はどうするつもりですか?」

「あいつと雫は見た目が似てる故いかがするかの」

尾崎局…隆元様の正室で山口の大内義隆の養女。

「あー!だからどっかで会った気がしたのね!」

似てるの…?

どうするかと思案している殿たちに解決策が思いつき恐る恐る聞いてみる

「私男装しましょうか?髪も短いですし、男なら問題ないでしょう。

隆元様の小姓ということならお邪魔にならないかと…」

「父上!失礼いたす!」

「元春今大事な話をっ ーーー」

「あ、兄上来てらっしゃったのですか!

隆家殿も姉上も!」

こっちを向いている元春様らしき人にすかさず

「元春、岡田雫殿だ。」と隆元様がすかさず言う

「儂は吉川元春じゃ!」とめちゃくちゃ元気に答える

吉川元春…元就公の次男で鬼吉川と呼ばれた吉川家の養子になった人。

生涯無敗といわれていて『勇』と称される男。

「よろしくお願いします。」

「元春、儂の新しい娘じゃ!景と同い年だから妹のように扱え!」

「父上の新しい娘か!よろしく頼むぞ!

で、父上雫殿はどこに住むのじゃ?」

「儂のところか…隆元のところか…」

元就公まだ諦めてないんだ…

「兄上のとこがええんじゃないか?」

ほら元春様にまで…

「うーん、尾崎局がの…」

「似とるけぇいけんのんか?」

「それで雫殿が男の格好しようって言い出しての~」

「もったいない気がするけどのー」

と隆元様も言う

「着せてみたらどうかの?」

「姫っ!」

「そうじゃの!姉上の言うとおりじゃ!」

隆家様ってこんなに毛利家に振り回されている人なんだ…

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