我が身の行方
次の日の朝、私は重い体を起こした。
夢ではなくこれは現実なんだと昨日手当してもらった傷を見る。
朝元就公の住んでいるところに行く。
そう聞いていたから着替えないと…
和服を着ていてもこの髪型だと目立つ
この時代ショートヘアーの女子なんていないもんね
髪のばそうかな〜
なんて元就公に会うって思ったら緊張しすぎてどうでもいいことまで考えてしまう。
「父上入ってよろしいですか?」
「隆元か、入れ」
隆元様に続いて入ると威厳のある人と出会う
この人が有名な毛利元就公か…
「隆元、お主が言っておった者はその者か?」
話を通してくれていたんだ…
「はい。父上なにとぞよろしくお願いします!」
隆元様…っ!
私も言おうとした時に
「隆元。」と一言口を開く元就公…
「はい。」
「儂は一言もいけないとは言っておらぬ。
儂も昔は女子を拾ったこともある。
隆元は儂の息子じゃの〜」
あの話は本当だったんだ…
「お主名はなんと申す?」
「岡田雫です」
「雫殿か…年はいくつじゃ?」
「17です。」
「景と同い年か!それにしては若く見えるの〜」
同じことを言われる…
親子だなぁ
「隆元、少し雫殿と二人きりで話がしたい。席を外してくれ。」
!?!?!?びっくりしすぎて隆元様を見ると
「父上!」隆元様も驚いた様子だ
「隆元。」
「…分かりました。」
隆元様がこっちを向きにこりとする
きっと大丈夫と言いたいのだろう
それに笑顔でうなづく
「隆元が一緒だと話せないこともあるからの〜
それはそれとして、お主酒は飲めるか?」
「いいえ、全くダメです。」
未成年だし誤飲したこと以外飲んだことはない
誤飲したのはすごい昔だけどかなり苦手な味だった
「酒は飲みすぎると人に癇癪を起こさせたりするからのぉ〜
儂も飲めぬ故共に餅でも食うか!
餅は好きか?」
炭水化物は大好物だ!
というかあの酒と餅の話も本当だったんだ!
「はい!」
「そうか!それは良かった〜おい!餅を持ってきてくれ」
餅を持ってきてもらった
「雫殿、そんな遠くに居らずにもっと近くに来い」
「は、はい!」
元就公の天然?わざと?なのは想像をはるかに超えてる。
今日初対面な上に身分もわからない女をこんなに近づけるなんて…
「隆元はお主のこと拾った自分の屋敷におきたいとしか申しておらんかったのぉ。
そんなことをわざわざ儂に聞かなくてよいものを。
…ところでお主、未来から来たのか?」
と餅をもぐもぐしながらさりげなく聞かれる
「っ!な、なんでそれを!?隆元様から聞いたのですか?」
「あやつも知っておるのか!
…そうじゃのー隆元がお主の話をした時にもしやと思っておったの。
しかし初めて会った時にこれは現代の者ではないと気づいた。」
「すごい…」エスパー?
「家臣の反対さえなければ大丈夫じゃ!」
いやいや絶対あるでしょ
それよりさっきから疑問に思ってたことがある
「ひとつ聞いてもええか?」
その前に元就公から質問される。
「なんですか?」
「お主未来へ帰りたいか?」
「…分かりません。」
「父や母を恋しく思わないのか?」
「確かに恋しいです。しかし、私はずっとこの世に来たかったのです。」
私の答えを真剣に聞いてくれる元就公。
一つ一つ言葉を紡ぎだしていく私。
「私は毛利家が好きです。昔からずっとずっとできることならば元就公のお側で働きたいと思って参りました。」
「そうか、儂の元でか…」
「はい。」
思案する元就公に私はさっきから気になっていた事を聞いてみた
「未来から来たって知っているのに未来のことを私に聞かないんですか?」
普通は聞くはずだ
「お主が未来から来たのであれば未来のことを聞くのが普通じゃろ。
しかし、お主がそれを話してしまえば未来が変わってしまうかもしれん。
お主が未来へ帰ることができぬかもしれんの。
そうすればお主は家族にも会えんなる。
そんなことはできぬなぁ〜
それにいつ帰れるかわからない未来のことを話すのも辛かろう。
話したいと思った時は話してくれても構わんが、無理はしてはならぬ。これは儂とお主との約束じゃ。」
視界が曇り雨がふる。
こっちに来て初めて泣いた。理由はわからないけど。
「おうおう…餅が硬くなるから早く食べようの!」
「はい…」
「ところでじゃ、雫殿、私の娘にならぬか?」
ん?んん!?
「お主は身分もわからぬ故正式にというわけにはいかぬが、娘として儂の元で暮らさぬか?」
「いいんですか?」
でも隆元様は?
「隆元を呼んできてくれ」と食器を下げさせながらさりげなく女中さんに言う。
どうするの?
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