鼓星

吉川元景

降り立つ場所

「おいっ!」なにか棒のようなもので叩かれる

「いたっ…」目を開けるとそこには槍先がこちらへ向いている風景がうつる。

「お主あやしき身なりだが、間者かっ!?」言葉遣い、身なり、武器…これは中世?近世?そこにセーラー服と傷だらけでタイムスリップとは一番たちが悪い。

「早く答えろっ!」

 これは、危機的状況なのでは?

 また叩かれそうになり身を縮めた瞬間――

「おい。何をしておる。」

「はっ。隆元様、あやしき身なりの者が倒れていた為問いただしておりまする。」

「あやしき身なりか…」

 隆元様と呼ばれた人は馬の上からこちらを見る。隆元…?もしかして…

「貴方は毛利隆元様ですか?」

「なぜ儂の名を知っておる?」

「それはそれは有名にございます!情に厚い方だという噂ですよ!」

「儂がか?有名なはずがない。」

 毛利隆元…毛利元就の長男で影で父を支えていたといわれている。あの有名な三本の矢の三兄弟の長男。『仁』と称される男…。

「貴方の父上は毛利元就公ですよね?」

「そうだ。お主どこのものだ?」

「安芸の国、広島です。」

「安芸にそのような着物が流行っているとは聞いておらぬが…」

 馬から降り、家臣が止めるのも聞かずに私の前に来て目を覗き込む。緊張して時が止まってしまったかのような気がした。

「連れて帰るぞ。」

 私の頭に手をおき言う。

「しかしっ!」

「お主名は?」

「岡田…雫です。」

「雫殿、とりあえず城に行こう。立てるか?」

 それが腰が抜けてしまったみたいだ。首を横に振るとよいしょっと私を脇に抱えて、馬に乗った。

「馬は乗るのは初めてか?」

「はい。」

「こうする故、離れないように捕まってくれ。」

 うわぁ恥ずかしい…


 しばらくすると城らしきところにつく。

「怪我をしている故だれか手当と着替えを。」

 と馬から降ろしてもらい言い残しいなくなる

 とりあえず手当と着替えをしてもらい部屋に通される

「雫殿、待たせたな。」

「あの、何から何までありがとうございます。」

「例には及ばぬ。お主に聞きたいことがあるんだが、何故あのような場所にあのような着物を着て傷だらけでおったのだ?」

「私がこれから言うことを信じてもらえますか?」

 うなづくのを見て話し出す。

「私は未来の世から来たようです。」

「そうか。」

「えっ驚かないんですか?」

「薄々気づいてたしな(笑)」

「えーっ!?」

「未来の世では自由に過去に来られるのか?」

「いえ。」

「なら帰る方法もわからないのか。」

「はい…」

「なら帰る方法がわかるまでここに住んでもいいぞ。」

「…え?」

「この屋敷の一室をあげるからそこに住むといい。」

「ありがとうございます。」

「父上のところに後で報告に参らなければならないから共に行き許可をもらおう。

 ところで父上のことは未来でなんと言われておるのか?」

「謀神と呼ばれています。」

「そうか!」

「嬉しそうですね♪」

「父上はすごい方だからな。じゃあすぐ準備する故明日父上の元へ参ることにする。今日は疲れただろう。部屋でゆっくり休めよ。夕餉はまた女中が知らせるからな。」と部屋を出て行く。

「ふぅー」

 ついに元就公に会える…っ!私が一番憧れている人。タイムスリップができるようになったら毛利元就公に会おうって思ってたこともある。それくらい毛利元就公のことを尊敬しているといか好きだ。もし私のイメージ通りじゃなかったらどうしよう。もし怖い感じならどうしよう。不安もある。そんなことを考えていたらいつのまにか夜になり女中さんに呼ばれる。

「雫殿、共に話がしたくての…」

「はい…」

「そう堅くなるな。お主はこの世に詳しいようだな。父上は未来の世でどう言われているか知りたいのー」

「元就公は謀神と呼ばれていて、生涯200以上の戦にでていると聞いております。

 三兄弟…隆元様、元春様、隆景様は有能な息子として有名です。

 あの…これ以上話すと未来が変わってしまうのでは…?」

「確かにそうじゃの…そのうち話しても良さそうな時に話してもらおうか。

 そういえばお主のことを全然聞いておらぬから教えてもらえるか?

 年はいくつじゃ?」

「17です。」

「景と一緒かのー」

 景…三男の小早川隆景様のことか…17ということは今は竹原の小早川家を相続している頃だろうか、それとも沼田も相続した頃だろうか…。『智』と称される男…

「お主結婚は?」

「まだです。」

「まだなのか!」

 この時代にしては遅いのかなぁ…

「私の生きてきた世ではこの年に結婚している人は珍しいのです。早くても20は超えているかと…」

「未来の世は長生きなのか?」

「そうですね!だいたい80くらいまでは皆生きています」

「そうか!父上もそのような世なら長生きできるだろうにの…」

 お父さん思いだな…


 その日は戦国の世のこともたくさん教えてもらってすぐに眠りに落ちた。

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