何も見えない街

 いつもの見慣れた街並み。

 毎日通る道、毎日登る階段、毎日電車を待つ場所。

 気がついたら、ずっと同じ景色が続いていた

 !

 歩いても歩いても景色が変わらない。

 ここは


 仕方がないので、同じ景色の街並みをもうしばらく歩くことにした。

 毎日見ている場所も、よく見ると気づくことがある。

 川が流れている道の角にはよく大きな鳥が水浴びをしている。

 子供は冬でも半袖で駆け回ってる。

 今日は水道の水が凍てついて動かない。

 ああ、あの車の色はよく見るぞ。駅前に似たやつが停まっているんだ……。

 同じ景色に、なんとか変化を見つけようといろんなものに手を伸ばした。

「このままでは目が塞がってしまう」

 私はいつから、こんなにも何も見えなくなったんだ?

「この街を出よう」

 本当は広いこの世界のどこかが、見えなくなってしまう前に。


 見慣れた街並み、いつもとは違う電車で、別の街に行こう。

 帰って来る頃にはここは新しい街になっている。

 少しだけワクワクした。

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