枯れ木の街

 白い霧は、さっき通って来た道を隠してしまう。

 ここは細くて背の高い木が立ち並ぶ場所。

 足元には黄色や赤の落ち葉が幾重にも積もっている。

「ずっとここが続くのかな」

 ガサガサと落ち葉を蹴りながら前に進むと、私の背丈よりも大きな落ち葉の山を見つけた。

「この中で眠ってみるとか、童話の世界みたいだな」

 駆け足に落ち葉の山に飛び込むと、葉が舞い上がり、落ち葉の山は山ごと地面の中に沈んだ。

 落ち葉の山の下には、何かがある!


 落ち葉のくすぐったい香りに揉まれながら流れ着いた場所は、飛び込んだ山よりも大きな落ち葉の山、その頂上。

 落ち葉に埋まった体を掘り起こして、周りを見渡したすと、霧の中、山の麓に何かが見えた。

 街だ。

 薄い霧と、秋の色に彩られた街並みは、まさに童話の世界の一画。森の妖精か、小人でも住んでいそうだ。

 落ち葉と一緒に流れ落ちて来ただろう場所を見上げるが、そこには薄靄うすもやの空しか見えなかった。


「これは……、私にも住めない場所だな」

葉の上を滑り降りて、街を目の前にすると、街は小人や妖精が住む場所とは思えないほどの大きさで、私は小指サイズはどの人間になった気分だ。

建物一つを見上げてみても視界に収まりきらなくなった街は、四角い岩の群れや木製の壁になってしまった。


もう一度高い場所に登れば、童話の世界を見られるかもしれない。

振り返ってみたけれど、白い霧がさっき通って来た道を、隠してしまった。

「世界の見方って難しいな」

私は街の端っこをあとにした。

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