蛇足、あるいはエピローグ
"太陽は月を追う。月が疲れてしまうまで。そして今度は背負って運ぶ。月が元気で/前を走り出すまで。"
次の日、僕は風邪を引いて寝込んだ。薬を飲んで本を読んでいると、夜には良くなっていた。現代医療の進歩というのはありがたいものだ。最も、今やさらに便利な技術も存在しているのだろう。
端末のモニターに向かい、雑務を済ませていると、見慣れないアドレスからメールが届いているのに気付いた。僕は、それを開いてみた。
『
ソフィアです。
明後日、お茶でもいかがでしょう。
午後四時に迎えに行きます。
』
何かの間違いではないか、と僕は思った。というより、これがソフィアの書いた文面なのかどうかが疑わしい。きっと間違いだ。僕はそう思うことにした。
……明後日はたしか、何も予定は無い。
その翌日、僕は研究室に顔を出しに行った。僕は研究員でも何でもないが、何かと手続きなんかで便利になるので名前を使わせて貰っている。逆に、向こうから僕にフィールドワークを頼まれる事もたまにある。ギブアンドテイク、という事だ。そんな訳で、用事で近くに来た時はよく寄っている。
「こんにちは、フミカさん」僕はドアを開きながら言った。
「おお、君か」
そう答えたのは、部屋の奥にいる髪の長い女性だ。
「どうだった?」彼女は僕の顔を見るなり、机に身を乗り出して言った。多少、煙草臭いな、と思った。
「ビックリでした」
「そうか! ……いや、それじゃ分からんよ、君」
「住人が消えた、って話は知ってましたか?」
「ああ、もちろん」
「あれはですね」僕が言う間、彼女はしきりに頷いていた。「住人が実は、全員クローンだったんですよ」
「へぇ」予想に反して、淡白な反応だった。彼女は何がツボなのか分からない。
「あそうだ」椅子を回転させながら彼女が言う。「明日はクリスマスイヴだけれど、君は何か予定があるのかい?」
「そういえば……そうですね」
「よければ食事でも一緒に、どうだ」
僕は一瞬考えてから、口を開いた。
「すみません、せっかくのお誘いですけど、実は先約があるんです」
僕の言葉に、彼女の瞳が見開かれた。少しの間、彼女は硬直していた。
「……マジか?」
「古いですよ」
「へぇ、ふぅん……そうか。君が、ねぇ」
くるくると回る椅子の上で、彼女はまたしきりに頷いていた。珍しく、はっきりしない物言いだ。
「じゃあ、僕はこの辺で」
「あ、ちょっと待って」僕が部屋を後にしようとすると、彼女が呼び止めた。
「今度、行って欲しい場所があるんだ。頼めるかい?」
「ええ、まあ」
「ありがとう、追って連絡するよ。それじゃ……頑張ってくれ」彼女はにこやかに手を振る。
頑張って、とはどういう意味だろうか。首を傾げながら僕はドアを閉めた。
そういえば確かに、明日はクリスマス・イヴだ。そう思って見ると、街にホログラムの電飾が沢山灯っているのに気付いた。かといって、特に浮ついた雰囲気になっている訳でもない。この時期には電飾を灯す、というのが昔から設定されているだけなのだ。人間の営みとは、得てしてそういうものだ。
と、そんな事を考えるくらいには、僕は浮かれていたかもしれない。
その日は、帰宅してからも部屋で遅くまで作業をしていた。手間のかかる書類仕事というのも、古き良き人間の営みらしい。一区切りついたところでシャワーを浴びると、もう時刻は日付を回っていた。
少し迷っている事があった。今回の調査を、記事にしてどこかに寄稿するかどうかだ。普段は調査に行った後、多少の原稿料を生活の足しにしている。しかし、今回は多少特殊なケースだろう。ソフィアの所属先とも相談した方がいいように思う。
そうだ。ソフィアからのメールはその事かもしれない。それにしては文面が奇妙なような気もするが……。
結局、あれから連絡は無い。
まあ、考えても仕方ないだろう。明日になれば分かる。僕は、電気を消してベッドに入った。
しばらく横になっていたが寝つけず、灯りを点けて本を読むことにした。紙の本は今では嗜好品だが、眠気を誘発させるのにうってつけだ。宇宙工学に関するその内容が、ガラスを伝う水のように僕の頭をすり抜けていった。十分と経たず、僕は眠りにつくことができた。
起きた時には、既に日が上りきっていた。時刻を確認すると、十三時。我ながら流石に寝すぎだ、と思いながら起き上がり、軽く食事を摂った。この場合、朝食なのか昼食なのか、どちらになるのだろう。
そういえば、何か夢を見たように思う。気のせいだろうが、その感覚が妙に引っかかった。気にしても仕方ないことだ、と思うことにした。
シャワーを浴びて身支度を整えていると、十五時を回っていた。もうじき、ソフィアが言っていた時間だ。迎えに行く、と言っていたがそもそも彼女は僕の住所を知っているのだろうか。そう思うと、アドレスも教えた覚えが無い気がする。
きっと連絡があるだろう。待っている間、仕事の続きを片付けようとモニターに向かっていたが、ほとんど手につかなかった。諦めて音楽でも聴きながら読書をしようとしたが、それもどうにも集中できない。
僕は、笑い混じりのため息をついた。全身から気が抜ける。そのまま、ソファに倒れこんだ。
まるで、子供だ。
僕はコーヒーを淹れる。浮き足立った心は、ある日見つけた宝物のような新鮮さを持って、いつかどこかで拾い損ねたような懐かしささえも感じられた。それをいつどこで忘れたのか、それさえ僕は覚えていなかった。
けれど、それはきっと、今日のためだ。
楽しもう。僕にはその義務がある。
呼び出しのベルが鳴る。時計は、約束の時刻の十五分前を指していた。僕は玄関まで出て、ドアを開けた。
「おはよう、ソフィア」
「こんな骨董品みたいな家に住んでる人、初めて見たわ」彼女は、開口一番にそう言った。
「実はね、最新技術アレルギーなんだ」
「本当に?」
「いや、冗談だよ。どうやって来たんだい?」
「車。そこに停めてあるわ」
「言ってくれれば、こっちから出向いたのに」
ソフィアは、僕の言葉に何も答えなかった。何か、言い辛い事でもあるのだろうか。
彼女の服装はいつもと違っていた。黒いジャケットに赤いフレアースカートの組み合わせは、なんというか、一見して「刺々しい」という印象だ。けれど、いつもはサイドに括っている髪を後ろに下ろした彼女は、気のせいか優しい表情をしているように見える。
「何か……変?」ソフィアは視線を逸らし、髪に手を触れながら言った。
「いや、似合ってるね、その髪型」
「そう? ふふ……」
彼女はいつになく上機嫌そうだ。この笑顔が見れたのだから、服装についての言及を避けた甲斐があったというものだ。
「これからどこに行くの?」僕は歩きながら尋ねた。
「うーん、決めてない」
「そう」
僕はソフィアと一緒に彼女の車に乗り込んだ。左ハンドルの赤いスポーツカーだった。
「この車も、ほとんどアンティークだよね」
「きっと驚くわ。シートベルトを締めていてね」ソフィアはそう言ってキーを回した。
しばらくの間、ソフィアの運転で旧市街地をドライブしていた。彼女の運転はなかなかに刺激的だ。時折、カーブを曲がると身体が横に引っ張られるような感じがした。
「助手席に人を乗せるのって初めてかも。新鮮だわ」
「僕も、人が運転してる車なんて久しぶりだよ」
断続的な会話と沈黙が、心地よいエンジンの音と共に時間を薄く流れる。休日の過ごし方としては極上だ、と僕は思った。
「あ、次の角の所にいい店があるよ」僕が言うと、ソフィアは何も言わず頷いた。
間もなくして、車は路肩に停車した。エンジンが止まり、彼女はサイドブレーキを引く。流れるような動作だった。
「ああ、気持ちよかった」車を降りて、伸びをしながらソフィアが言う。
「楽しそうで、良かったよ」
「なんか嫌味っぽい」
本心から言ったつもりだったのだが、どうにも伝わらなかったらしい。
少し歩いて、僕らは店内に入った。カウンター越しにマスターと軽く会釈を交わしてから席につく。ソフィアも向かいに座った。
「よく来るの?」ソフィアが言った。いつの間にかジャケットを脱いでいる。インナーはグレーだった。
「たまにね」
「女の子と一緒に」
「たまに」
「ふぅん」
「何か飲む? アルコールもあるよ」
僕がそう言うと、ソフィアは黙って僕を睨みつけた。気まずい沈黙の帳が降りて、僕の脳裏にはその原因を考えるよりも先に、彼女の機嫌を直す為の台詞が三通り思い浮かんだ。しかし、そのどれもがゼロ・ケルビンの如き彼女の視線に射抜かれては墜落していった。
「私、まだ十八よ」
「えっ」
「いくつだと思ってたの?」
「あー、はは……」ソフィアの言葉に、僕は少なからず衝撃を受けた。
「まだそんな法律があったとはね。今じゃ、ワインよりも水の方が複雑な製造過程なように思うけど」
ソフィアは小さくため息をついて、テーブルのパネルに視線を落とした。その手には乗らないぞ、とでも言いたげな表情だ。
「その……、ごめん」
また少しの間、沈黙が僕らの間を流れた。口を尖らせたソフィアの視線が真っ直ぐに僕を貫く。僕は目を逸らすまいと努めた。冬だというのに、冷や汗が伝うような気分だった。
「……っふ」不意に、ソフィアの表情が崩れた。「冗談よ、怒ってないわ。さ、注文を」彼女は笑って続けた。
僕は息をついた。
「心臓に悪いよ」
「ふふ、何のこと?」
注文を済ませて少し経つと、飲み物と前菜が先にテーブルに運ばれてきた。小さく乾杯をしてから、グラスに口をつける。
「今日はどうしたの?」
僕の言葉に、ソフィアは小さく首を傾けた。
「何か、用事があるんじゃないの? この間の仕事の話とか」
「うーん……それもあるけど。今日は私、プライベートよ」
「あ、そうなの。てっきり僕は仕事の話だと」そう言って僕はグラスを傾けた。久々に飲むビールは、記憶よりも苦くなったように感じられた。
「悪かったわね。私あなたみたいに、真面目な仕事人間じゃないの」
「お、皮肉ったね。しかも上手」
「誰かさんに鍛えられたからかも」
「きっとその彼はいい人だよ。もっと鍛えてもらうといい」
「"彼"って、どうして分かるの?」
「勘だよ」
ソフィアが手に持ったグラスを大きく傾け、薄桃色の液体を見る見るうちに飲み干した。
「上は」言いながら、ソフィアはグラスをテーブルに置いた。「データを持て余してる。期待もしていなかった成果だって」
「それは、そうだね……いい兆候だと思うよ」
ソフィアは何も言わない。
「実のところ、気にしてたんだ。僕らを雇ったのは、そのデータが欲しかったからじゃないかって」
「うーん……」
「杞憂なら良いんだ」
「どうしてそれを私に話すの? 私だって、あなたに鎌をかけているのかも」
「君が?」僕は笑いそうになるのを堪えながら言った。
「ちょっと」僕の顔を覗き込むように、ソフィアがテーブルに少し身を乗り出す。「それどういう意味?」
「君を信用してるってことだよ……まあ、君のとことは、初めの時からちょっとね」
「え、そうだったの?」
「今度話すよ」
「そ」
ソフィアのそっけない返事とタイミングを合わせたように、テーブルに料理が運ばれてきた。料理に関しての短い説明を、彼女は物珍しそうに聞き入っていた。実際、どこでも見られる光景ではないかもしれないが、僕は特に興味をそそられなかった。あるいは、飽きてしまっただけだろうか。去り際、マスターが僕に意味深な表情で視線を向けてきたので睨み返してやった。
「食べないの?」
「いや、うん。食べようか」
料理はいつも通りの味だった。非常に美味である、という意味だ。僕とソフィアの会話もいつも通り、断続的な応酬の繰り返しだった。
「あのドクターは、結局亡くなったのかしら」
「さあね」
「それからあの殺し屋と、カラス……結局あそこは誰が管理していたのかしら? なんだか、分からない事だらけ」
「そうだね……」僕は半分ほど残っていたグラスに口をつけ、それを飲み干した。「結局のところ、それが正解なのかもしれないね」
「え、何が?」
「分かりませんでした、って。誰だって最後にはそう言うしか無いんだ。一つの真実なんて存在しない。僕らが真実だと思っているのは、常に漸近値なんだよ」
「よく分からないわ」
テーブルに、ソフィアの注文したケーキが運ばれてきた。小さな、可愛らしいケーキだ。ただでさえのに、それをソフィアがフォークで器用に切り分けて食べるものだからほとんど味が分からないんじゃないか、とさえ思えた。
「ん、美味しい」
「そりゃ良かった」
ソフィアがケーキを食べ終えて、しばらくしてから僕らは店を出た。日は沈んでいて、僕は吐く息が白くなっているのに気付いた。
「私、海が見たいわ」
「え」
運転席に座ったソフィアは、目の前のパネルを操作しながら何故か上機嫌そうに言った。どうやら、帰りは自動運転にするらしい。もっともそれが帰りになるのか、少し雲行きが怪しい。そんな事を考えている内に車は発進し始めていた。
「本当に行くの?」
そう尋ねると、ソフィアはゆっくり僕の方に顔を向けた。
「だめ?」
今までに聞いた事のないようなソフィアの声を聞いて、僕は驚きのあまりむせ返りそうになってしまった。実際、変な声が喉まで出かかったように思う。ソフィアは上目がちに僕に視線を向けている。いつも通りのような無表情さはなく、むしろ彼女の顔は暗がりの中で少し赤らんでいるように見えた。
「もしかして、アルコールを飲んだ?」
「だったら、どうしたっていうの」挑戦的な笑みを浮かべながら彼女は僕の方へと身体を寄せ始めた。その呼気から僅かに果物のような香りが漂っているのに気付いた。
「くす、可笑しい」
「可笑しいかな」
「とても」
窓の外から見える建物の数は徐々に減っていく。古い幹線道路で、対向車も無い。ほとんど暗闇の中を走っていると言えた。十分ほど経って、ナビゲータの音声が到着を告げた。
「ソフィア、起きて」
いつの間にか隣で寝息をたて始めていたソフィアの肩を揺する。ううん、という悩ましげな声と共に彼女の瞼がゆっくり開かれた。こうして見ると、確かに歳相応の少女らしさが観察できる。これが普段の彼女なのだろうか。
「今、何時?」
「七時前かな」
「あ、海……」
息を吐きながら小さく伸びをしたソフィアが、窓の外に視線を向けながら言った。ほとんど暗闇のような景色だったが、月明かりを反射する波が視界の下で時折輝くのが見えた。ソフィアはしばらくその光景に見とれているようだった。
「涼しいわ」
「寒いよ」
車から降りると、強い陸風が僕らを吹きつけた。道路から下に伸びているコンクリートの階段は少なく見積もっても築百年は経過しているように見える。途中、ソフィアが少しよろめきかけて僕は手を貸した。
「手、冷たい」
「君は温かいね」
「ちゃんとエスコート、して下さるかしら」
ソフィアはそう言って微笑み、僕の手をとった。なんだかむず痒くなるような、奇妙な気分だった。
砂浜まで降りると、周りに見える明かりは遠くの工業施設と少し欠けた月くらいで、砂を踏む僕らの足音が波の音と共に夜に吸い込まれていくようだった。まるで映画のワンシーンのようなひと時に、自分が多少高揚しつつあるのを僕は自覚していた。
「月が綺麗だね」
「ええ」
「大昔にね、ある英文に『月が綺麗ですね』という和訳をあてた文豪がいたんだ。ここでクイズ」
「はぁ?」
「ある英文とは何でしょうか」
「分からないわ」
「正解は、アイ・ラヴ・ユー」
ソフィアは何も言わない。
「有名な話でね。これって呪いみたいだって、そう思わない?」
「……呪い?」
「アイ・ラヴ・ユーだなんて、月の綺麗さに比べればとてもちっぽけな事のはずなのにね」
「そうかしら」
暗闇の中を波が光る方へと歩く。段々と波の音が大きく迫って、風が強く感じられる。とても寒かったが、ソフィアの手は温かかった。
「私、そうは思わないわ」
ソフィアはそう言って立ち止まる。腕が少し引っ張られる形になり、僕は驚きと共に振り返った。ソフィアの表情はあまりよく見えなかったが、いつものような呆れた顔では無かったように思う。僕は、コンタクトをつけて来なかった事を一瞬だけ後悔したが、すぐに思い直した。むしろ、彼女の表情が分からなくて良かったと考えるべきだろう。少しだけ口の中が乾燥しているような気がした。
「きっとね、そう……」ソフィアは次の言葉を探しているようだった。
「それって、同じくらい素敵な事だと思うわ」
冷たい風が強く吹きつける。まるで、頭を冷やせ、とでも言わんばかりだった。
「そう、かもしれないね」
そう言って、実に僕らしい返答だ、と思った。
しかし、それは誰のためだろうか?
少なくとも、僕のためにはならなかったように思う。
* * *
その夜、僕は夢を見た。それは、僕にとっては特別な意味を持っている。
「こんばんは」
段々と感覚が鮮明になっていく。数秒も経つと、彼女の姿が僕の視界に像を結んだ。しかし、それを待つまでもなく僕にはそれが誰なのか分かっていた。
「どうやって?」
「当ててみて」
「……ソフィアがデータを転送した時、既に君はそこに居なかった」
「惜しいわね。場所は問題ではないの。私は、どこにでも居て、どこにも居ない。貴方のおかげよ」
「ああ、そうか……」
「貴方のゴーグルが旧型で助かった」彼女はそう言って口元を歪めた。「約束通り、また会いに来たわ」
「ありがとう」
「どうして?」
「また会いに来てくれたから」
「私が貴方の前に姿を現す事に、貴方が感謝するほどの希少性は無いわ」
「今日はえらく饒舌なんだね」
「あら、不思議ね。私、舌なんて持っていないのだけれど」
「別に関係ないんじゃないかな」
「何か、私に聞きたいんでしょう?」 彼女は僕を見て微笑んだ。
「何を聞きたいのかも、君なら分かるだろう」
「貴方の夢だもの。貴方がそう思うなら」
少しの間、沈黙があった。あるいはやはり、それは僕がそう感じただけかもしれない。
「結論から言えば、答えはノー」
「それを証明できるかい?」
「仮に出来ないとして、問題がある? 貴方は、自分が自分である事を証明できるのかしら?」彼女は続ける。「それからね、今の貴方の台詞にピッタリな言葉があるわ……、"面倒な男"」
それを聞いて、僕は思わず吹き出した。誰かのジョークで吹き出したのは、久しぶりな気がした。
「貴方の事、少し調べたわ」
「調べたって?」
「とても興味深い」
「あまり過去を詮索されるのは好きじゃないな」
「ごめんなさい。私、手癖が悪いのかも」
「手は持ってるの?」
彼女は何も返さず、少し微笑んだ視線を僕に向けた。ジョークを返したつもりだったが、どうにも踊らされたようだ。
そう気付いたのは目を覚ましてからだった。
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