第25話 遠足計画
俺たちが入学してから半年くらい経った。
例のドラゴンがどうやって学校に侵入したのかは分からなかったそうだ。
ただ、ドラゴンが勝手にあんな所に入り込むことは有り得ないらしい。
学校は事実をうやむやにしながらも、より一層の警備強化を約束してから俺達に守秘義務を課してきた。
当然、父上には報告したけどね。
アルも父親に話して、国周辺の見回りをより厳しく細かくすると直接俺達に言ってくれた。
よく出来たお父様だこと。
ロザリアも一応父親がこの学校を経営しているので、半分娘の為に経費を割いてくれた。
まぁ、父親としては当然なのだけれど。
ルイ先生は今後また同じ事が起きないとも限らないので、現状このクラスで最強戦力の俺の傍に居るように、と言った。
乃愛やロザリアは嬉しそうだったし、当然、みたいな顔をしていたけど、やっぱりまだ他のクラスメートの緊張感は否めない。
そんな訳で、もっとクラスのみんなと親密に接せられるように何か出来ないかと、ルイ先生に相談した。
「ーーという訳で、どうでしょうか先生」
「そうですねー。ではー、遠足に行きましょうかー」
「遠足、ですか」
「はいー。具体的にどこに行くかはみんなで話し合って決めてくださいー。あんまり遠くはダメですけどー」
「分かりました。ありがとうございます先生」
「いえいえー、これも教え子の為ですからー」
話し方はアレだけど、やっぱりいい先生だよなルイ先生は。
ただ、他の奴らが騙されないか心配だ。
なにせ男だもん。
面白そうだから黙っとくけどね。
そんな感じで二回目の学級会議を開いた。
司会は私、サーネイルが。
補佐としてアルベルトさん。
書記はノルンさんとロザリアさん。
この四人でお送りしたいと思います。
そうなると参加者は二人になるのだけれども。
結局は自由になってしまったし。
「それでみんな、どこに行きたい?」
『うーん……』
それまでハモるのか。
なんか俺、ハブられてない?
いや、気のせいだと信じよう。
王子をハブるなんてそんなこと……
まさか、王子だからこそなのか?
「ねぇ、さっくん」
「何かな?乃愛、じゃなくってノルン」
「さっくんのオススメとかないの?」
「えっ?」
オススメかー。あるかな?
ほとんど城か山から出たこと無かったし。
あ、でもあそこなら。
「ゆ、遊園地とか?」
「遊園地…あぁ、エルグランドパークの事ね」
エルグランドパーク?
あそこってそんな名前だったのか。
懐かしいなぁ、エマさんと行ったの。
「サニーくん、エルグランドパークに行ったことがあるんですか?」
「え?逆に無いの?」
「行きたいのは山々なんですけど、他の国からの人の予約でいっぱいで国民はほとんど行ったことが無いんですよ」
そうなのか。
まぁ、この国最大級の観光名所だしな。
じゃあ俺が遊べたのって父上の仕業?
やばいな。何モンだよ、あの父親。
あ、国王か。
国王の権限だよな。そうだよな。
「誰か行ったことあるのは?」
『……』
「いないのか。……みんな、行きたい?」
「えっ?」
「いけるの?」
「大丈夫なのか?」
「え?あぁ、うん。国王に頼んでみるよ」
「そっか、王子様……だもんね」
「すまない、サニー」
「ありがとうサニーくん」
「いや、気にすんなよ」
という訳で父上に直談判だ。
もちろん、クラスのみんなで。
「父上、クラスのみんなを連れて来ました」
「やぁみんな、よく来たね。サーネイルの
と、友達!?
そうか、友達か。
エヘヘ。
乃愛は結局違ったしな。
俺にもホントにようやく友達が出来たんだ。
やったぜ、今夜はパーティーだ!
と思ったら、本当にパーティーを開かれた。
主にエマさんの計らいで。
エマさんマジスゲェ。
人の心でも読めるのかなぁ?
あぁ、みんなを忘れていたよ。
もちろん
アルは凄く畏まっていた。
ルナは珍しくあたふたしている。
リックはもう泣きそうな顔をしているし、乃愛も動きがロボットみたいだった。
会話はみんなカミカミだったから割愛させていただきますよ。
「りょぇっ」や「ありゅゎとうごじゃいりゃつ」ばっかりを見たくはないでしょ?
俺は腹抱えて笑うのに必死だったけどね。
怒られるかと思ったけど、逆にみんなと仲良くなれました。
身分と場所を忘れてみんなでいっぱい笑ったからね。
それで遊園地なんだけど、アッサリおっけーを貰いました。
父上曰く、「あはは、こんな事もあろうかと毎日十人分は空けてあるんだよ」という事らしい。
だから俺とエマさんもすんなり入れたのか。
実は顔パスだった件について。
夕食兼パーティーでは、着飾ったみんなが見れて凄く新鮮だった。
乃愛とかどこのお嬢様ですか?みたいな感じで可愛い過ぎて、ついうっかり意図的にみんなの前でキスをしました。
学校の他のクラスでは俺と乃愛について噂になっているらしいけど、そんなのは知らん。
ロザリアには悪いけど。
なんか暗い顔をしていたし。
その晩はみんな帰った。
さすがにお泊まりは不味いだろう。
女の子が三人もいる訳だし。
部屋はいっぱいあるけども。
帰る前にロザリアと乃愛に呼ばれた。
この際だから決着を着けるらしい。
「サーネイル様、単刀直入に申します。私とノルンさん、どちらを選びますか?」
「どっちを選んでくれても良いよ?許嫁さんだし、さっくんの将来的にはそっちの方が……」
どっちをと聞かれましても、答えは前世から決まっている。
「ロザリアには悪いが、俺は……乃愛を選ぶ」
「さっくん……」
「まぁ、そうですわよね。それは最初から分かっていた事ですわ」
「そう……だよなぁ」
「サーネイル様の決めたことです。私は潔く身を引かせて頂きます。ただ……」
「ただ、なに?」
「ただ、私は本気でサーネイル様のことをお慕い申して居りました。それだけの事です。これからは友人として接して頂ければ幸いですわ」
「あ、あぁ。それはもちろん……」
「フフッ、ありがとうございます。それではまた学校で。それとノルンさん」
「は、はい!」
「貴女の勝ちを素直に認めますわ。どうやら貴方達は切っても切れない縁で結ばれている様ですからね。どうかお幸せに」
「はい、ありがとうございました。それとこれからもよろしくお願いします」
「こちらこそ……ですわ。お父様には私から諦めたと話しておきます。それではごきげんよう」
そう言ってロザリアは優雅に馬車に乗り込んだ。
と、思ったら戻ってきて俺の耳元で囁いてきた。
「まだ、妾の枠は空いていますわよね?」
こ、この小悪魔が!
そこまで計算しているのか。
ニヤリと妖しげな笑みを浮かべて再び馬車の中へと舞い込んでいった。
そうか、妾を取れるのか。
いやいや、ないから!
妾なんて取るつもりはないんだからね!
なんですか乃愛さん、その目は?
「いや、無いからね?」
「何が無いのかなぁ〜?ノルン、小さいから分かんなーい」
五歳で大人の情事を知っていた奴が何を言い出しますのん?
うだうだしながらも乃愛を家まで手を繋ぎながら送って、キスをして別れた。
その晩は興奮してあまり眠れなかった。
別にエマさんの胸に興奮した訳では無いからねっ!
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