第18話 弟 or 妹?


 「ふぅ、終わったぁ」


 「お疲れ様でした。サニー様」


 俺は頑張った。そして終わらせた。


 何をかって?

 宿題だよ。学校の宿題。


 この量半端じゃないよ。

 前世の夏休みの宿題の方が可愛く見えるくらい。

 

 しかし、俺と同じくらいの歳の子はだいたいが親の手伝いをしたり、働いてたりする年頃のはずだ。


 気になったので、エマさんに聞いてみた。

 すると、「地位や能力によって宿題の量が調整されているのです」との事。


 なるほど。納得。

 地位が高いほど英才教育を受けるし、俺のように暇人も出てくるはずだ。

 その人の能力に合わせた量や内容を無理のない範囲で出すのだ。


 俺の場合はどうせあの父親親バカが俺の事を天才だの何だの言ったのだろう。

 タダでさえ一番地位が高いのにはた迷惑な話だよ。


 ちなみにどんな内容だったのかと言うと。

 一、毎日の日記を詳しくイラスト付きで三十行以上書くこと。

 二、十作の論文を読んでそれぞれの内容を簡潔にまとめて感想を書くこと。

 三、この世界から争いを無くすためにどうすればいいか、について小論文を書くこと。

 四、魔道具を一つ制作すること。

 五、何か一つ、胸を張れることを成し遂げること。


 この五つだ。

 どうやって終わらせたのかもついでに。


 まず一つ目は、相当悩んだ。

 毎日あるのにする事がなく、同じようなパターンになりつつある。

 それを三十行以上だ。

 すごくめんどくさかった。


 二つ目は、三歳の頃にたくさん読んで内容を覚えていたので、すぐに書き終わった。

 やはり小さい頃の記憶力はすごいね。


 三つ目は、日本を参考にした。

 とはいえ王族が民政にしろとは言えないので、武力を使わずに政治をすることや、民衆の意識改革のためにどうすればいいかについて書いておいた。


 四つ目は、エマさんに教えて貰った。

 この世界には魔道具というものがあり、それを使うことで魔法を使えない人でも簡単な効果を発揮出来るようになるのだ。

 前世の電化製品みたいなもんだ。

 魔道具毎に用途が決まっていて、効果によって値段が変わってくる。


 それを幻魔法で効果を付与してオリジナルを作るのが宿題だ。

 こんな宿題を出すとか意地悪すぎるだろ。

 俺は本でやり方を調べて、コピー機を作った。

 中学校で習った版画をイメージしながらしたら出来た。

 ここではシャルマン語がものすごく役に立って少し嬉しく、誇らしくなった。


 最後の五つ目だが、これが一番簡単だった。


 だってそれを終えて帰ってきたんだから。

 山奥で四年間自給自足をして、さらに一財産を築いたのだ。

 十分自慢出来るだろう。

 俺がやったのって、狩りくらいだけれども。


 まぁ、そんな感じで宿題を終わらせた。

 だいたい一ヶ月かかった。

 学校まであと四ヶ月ほどである。


 あと、もうそろそろアレだな。

 十月十日とつきとうかだ。

 母上が出産する頃だろう。


 そう思っていると、三日後に陣痛が始まった。

 ちょうど俺が母上の様子を見に行った瞬間だった。

 すぐに部屋を出てメイドさん達を呼んだ。

 大急ぎで準備が始まり、あっという間に城内は大騒ぎになった。


 父上も仕事を切り上げて駆けつけた。

 エマさんも中心になって仕切っている。

 エマさん相当慣れてるな。


 俺も何かしてあげたいと思い、母上の汗を拭う仕事をエマさんに貰った。

 予想以上に時間がかかっている。

 俺の時とは違うみたいで難産らしい。

 間近で見ていて、「凄いなぁ」と、不意に口から出たくらい神秘的に感じた。


 俺も乃愛と……えへへ。


 そしてとうとう、「オギャー」という元気のいい泣き声と共に生まれた。

 アレが付いていた。男の子だ。

 ついに俺にも弟が出来たんだ!と、喜んだのもつかの間。


 周りがザワザワとし始めた。

 歓喜の声はすぐに静まった。


 俺は不吉な考えがよぎった。

 もしかして死産?と。

 しかし弟は元気に泣き続けている。

 ではいったいなんだろうか?


 そうこうしていると次の瞬間、「オギャー」という声が増えた・・・

 のぞき込むともう一人生まれていた。

 双子だ。

 目線を落とすと付いていなかった。

 女の子だ。妹も出来たのだ。


 女の子を確認した周囲の大人達はさっきよりもさらに大きな歓喜の声をあげた。

 よっぽど嬉しいのだろう。

 俺だって嬉しい。

 弟と妹が同時に出来たのだ。

 どっちも可愛いなぁ。


 その騒ぎも二人が眠ったと同時に収まった。

 そして父上が二人に名前を付けた。

 弟のほうはレオナルド。

 妹はリリアーナと、それぞれ名付けられた。


 なかなか俺好みのネーミングセンスだ。

 俺はそれぞれを「レオ」「リリィ」と呼ぶことにした。

 そしたらエマさんも便乗してきた。


 とにかく無事に生まれて良かった。

 レオ、リリィ。これからよろしくな!



 そして二人が生まれてから数ヶ月がたった。


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