第二章 少年期編
第17話 帰宅
エマさんと二人で暮らし始めてから四年ほど経った。
俺は九歳になっていた。
乃愛と約束した学校は
俗世間から離れるってのは良いもんだ。
新しい環境に身を置くことで、いろいろな感性が磨かれていった。
この四年間で俺もだいぶ成長したと思う。
オトコノコのアレはまだだが、魔法はそこそこ使えるようになった。
これから最後の狩りに出掛けるので、狩りながら説明しよう。
さて、森に来たわけだが、まずは索敵だ。
魔法の練習をずっとしてきて思ったが、幻魔法ってものすごく便利なのだよ。
物体として存在しないことならたぶん何でも出来ると思う。
独学なので大したことはないと思うが、少なくともここでの生活に必要なことは出来るようになった。
索敵だが、まず幻魔法で広範囲に魔力を広げ、風魔法で一定の場所に固定する。
エアコンのようにまんべんなく広げるイメージで。
そうしたらじっと待つ。
そして動物が触れると魔力が動く反応が出てくる。
つまり、センサーのように感知したものを特定するのだ。
見つけたら動きに合わせてゆっくりと背後に回る。
あとは黒竜丸でスパッと瞬殺だ。
血抜きを黒竜丸でし(てもらっ)たら、風魔法で浮かべて運ぶだけ。
どう?簡単でしょ?
索敵ー隠密ー豆腐 がパターンになっている。
あと、異空間収納が使えるようになった。
いつでも、どこでも、何でもしまえるのだ。
俺はここに倒した木や、とれた食料、その他使えそうな物は何でもしまっている。
これのイメージは四次元ポ〇ットだ。
そう、大事なのはイメージだ。
想像力だ。
この世界の人達は実際に見ないと想像出来ないらしいが、俺は前世で様々なマンガ現象を見てきたのだ。
それを幻魔法で実現させるだけ。
やはり何事も経験が大事なのだ。
魔法でシャルマン語を使う意味がなくなったので少し寂しいが、乃愛とまた話す機会はたくさんある、というかできるようになるので、そこまで気にはしていない。
その気になれば前世の色んな物が再現出来そうだけど、機械については学習していないのでそもそもの構造がわからないから難しい。
だからそれをどうするかなんてのは、追々決めていこう。
ここでの生活はこの世界でも貴重な体験だったと思う。
それに楽しかった。
ほとんどエマさんと黒竜丸がやってくれたが、そのお陰で充実を日々を送れた。
エマさんの相変わらずの有能さと黒竜丸の便利さ、魔法の使い方にサバイバルスキルなど、素晴らしい発見がたくさんあった。
作物と土地をまるごと父上に売ったことで、金銭面にも余裕が出来た。
名残惜しいのはやまやまだけれど、帰らないといけない。
去り際に「また来るよ!」と言って、父上の派遣した人に引渡した。
そうして山での生活は終わりを迎えた。
王宮に戻る時はピンクのあのドアをイメージしてワープできるゲートを作り出した。
これにはエマさんも驚いていた。
エマさんにも出来ないことがあるんだね。
帰ったらすぐに王に会いに行った。
母上は珍しく部屋で休んでいるらしい。
「ただいま戻りました」
「さ、サーネイル。しばらく見ない間に大きくなったな」
「そうですか?」
自覚は無いが四年も経ったし、身長は伸びるだろう。
変異種の影響がなくて良かった。
「お久しぶりですしね」
「楽しかったか?」
「はい! 父上も野菜がお気に召したようで」
「うん。すごいねアレ」
「エマさんと黒竜丸のお陰です」
事実だ。俺はほとんど何もしていない。はず。
「それはそうと、そろそろ学校に行く時期なのだろう?」
「はい。そのことなのですが……」
「お前がいない間に準備は全部終わらせておいたぞ」
「え? あ、ありがとうございます」
「学園長にだけ事情を話したが、お前は中級貴族ということで話を通している」
「さすがに王族だと明かすのは不味いですからね」
「そういう事だ。まぁ、頑張れ」
全部済ませておいてくれたのか。
ありがたいな。
中級貴族というと、ごく普通の貴族であまり権力はない。
男爵辺り?
財力はそこそこあるので身なりは立派だ。
普段は王から与えられた領地の管理を任されている。
「ご苦労をお掛けします」
「これも息子の為だからな」
嬉しいことを言ってくれるねぇ。
父上もだいぶ親としての自覚が出てきたようだ。
「それともう一つ、言っておくことがあるのだが……」
「何でしょうか?」
「お前に兄弟が出来るぞ」
「はい?」
弟か妹が生まれてくるのか。
前世でも兄弟なんて居なかったから、楽しみだな。
「今何ヶ月なのですか?」
「九ヶ月くらいだが、なんでそんなことまで知ってるんだよ……」
「エマさんが……」
と言いながらエマさんの方に向くと、にっこり笑いながら「分かっていますよ」と口パクで言ってきた。
エマさん、ありがたいのだが、何を知ってるのかな?
「まぁ、学校に行く前には生まれるはずだから、楽しみにしておけ」
「わかりました」
その後、母上にも顔を出してお腹も触らせて貰った。
お腹の中で赤ん坊が動いたときは、なんとも言えない感動が沸き起こった。
俺は学校から出されているという宿題をしながら出産の時を待った。
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