第11話 疑問

 初めてのお友達が出来た翌日の朝、部屋の扉をノックする音で目が覚めた。


 「んぅ〜、どうぞぉ〜」


 後で気付いたが、完全に寝ぼけている。

 ちょいと恥ずかしい。


 「失礼しまーす!……あ、おはようございます」


 「あぁ、ノルンちゃん。おはよー」


 「はい! あ……あの、朝ごはんが出来ているのでお知らせに来ました」


 「うん。ありがとう」


 「そ、それではまた後で……」


 なんだろうか。ちょっと挙動不審なのだが。

 と、考えてみるとエマさんと半裸でくっついて寝ていたままだった。

 まだ五歳くらいだと言うのに、どこでそんな知識を覚えてくるのか。

 そういう客が割とたくさんいるんだろうか。


 そんなことを考えながら食堂に向かった。

 エマさんは昨日珍しくセリーさんとお酒を飲んでいたのでまだ眠っている。

 後でいっぱい謝られそうだ。

 別に良いのに。


 「あ、サーネイルくん」


 「改めておはよう、ノルンちゃん」


 「は、はい。あの、その」


 「……僕はまだ五歳です」


 「そっ……そそそ、そうですよね。ごめんなさいっ!」


 やっぱり知ってるのか。

 最近の子はおませさんなんだな。


 「えーと、朝ごはん、出来てます」


 「うん。ありがとう」


 「今朝のごはんは、わたしの手作りパンとソイのスープです」


 おお手作り!

 しかも焼きたて!


 パンって作るのに意外と時間がかかるから早起きしないといけないのだが、凄いな。

 それも仕事だと言えばそれまでだが。


 ソイのスープとはなんだろう。

 見た目はちょっと茶色っぽくて、味は少し塩辛い。だが、それが良い。


 ……と言うか味噌汁!

 ああ、確かにスープだよ!

 でも、ミソスープだよ!


 そもそも味噌なんてこの世界には無いはず。なのにどうして?


 王宮では出てこなかったから庶民的な物かとも思ったが、初日に店を軽く見て回っても味噌どころか醤油も見当たらないし、そもそも砂糖や塩すら結構なお値段がするのだ(あくまで庶民が買える範囲の話だが)。


 つまりこの店、もしくはこの辺りのごく限られた地域にしか存在しない・・・・・のだ。


 「これって……味噌?」


 思わず口にしてしまう。

 するとノルンちゃんが何故か驚いた顔をした。


 「さ、サーネイルくん。な、なんで知ってる・・・・の!?」


 えっ!?

 な、なんて?


 と、聞き返そうとするとセリーさんがエマさんを連れてやって来た。


 「おはようございます、サニー様」


 「あ、ああ。おはようございますセリーさん」


 「サニー様、申し訳ございません。私とした事が、久しぶりの酒に呑まれてしまうとは」


 「いや、大丈夫だよ。もう平気?」


 「はい。ご心配をお掛けしました」


 「なら良かった」


 良かったのだが、それよりも聞いて置かなければいけないことが!


 「ほら、ノルン! エミリーさんに朝食をお出ししなさい」


 「え? あ、はい。ただ今!」


 そう言って、ノルンちゃんは厨房へと駆け出す。

 ちょっとした邪魔が入ったか。


 だがどういう事なんだろう。

 そもそも彼女は何者・・なんだろうか?



 その後は他の客が降りてきて忙しくなり、話す機会がなくなってしまった。


 俺は、モヤモヤしたまま朝食を終えた。

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