第32話

僕は小さい頃から

貧乏だった。


しかも両親は

朝から晩まで

働いていて

ご飯は兄が

作っていたらしい。


その兄も部活やら

受験やらで

忙しくなった。


僕がご飯を

作ることになった。


小学校4年のときだ。


僕はそんなこと

やりたくなくて

いつまでたっても

始めなかった。



小学校が家から

3キロくらいあり

帰るのに1時間は

かかった。


クタクタだし

お腹も空いた。

誰もやらないから

重い腰を上げて

始めたのが

7時過ぎ。


家にある食材で

自分で考えなければ

いけなかった。


毎日ポテトサラダと

ご飯だったと思う。


いつも9時過ぎにしか

ご飯は食べられなかった。




キミはキミで

大変だったようだ、


母親が子どもを

連れて

家を出たから。


それまでは

苦労なしの

裕福な暮らしだった

らしいが。


あまりキミは

語らなかった。


少しは知っていた。


あるいはキミの母親が

僕に語ってくれたのかも

しれない。




ある日、

久しぶりにキミが

連絡してくれた。


母親が

離婚していなかったので

亡くなった父親の遺産を

もらった話をしてくれた。


お金ではなく

蔵をもらったらしい。

蔵の場所を

ネットの地図で

教えてくれた。


キミは義理堅いから

毎月15日に

父親の実家に

お参りに行くと

言っていた。


前の日から出て

お参りして

半日かけて帰る

そうな。


キミらしい。

高速道路を通らない

ところが。


毎月だから

大変だね。


でもキミのことだから

欠かさずお参りに

行くだろう。



なんでその話、

僕にしてくれたのだろう。




よく田舎に住みたい。と

話をしていたことを

思い出す。


自給自足で

のんびり過ごしたいね。と

話していたと思う。


実現することは

なかったが

キミはきっと

遺産にもらった

蔵の場所が

キミの言っていた

田舎なのかもしれない。


それを僕に

伝えたかったのかな。



蔵の場所は

海の近くに立っている

らしい。


地図では

蔵からそんなに

離れていない場所が

海になっていた。


僕は地図しか

見てないから

わからないけれど

なぜかキミの説明で

なんとなく

情景が浮かぶ。



僕も行きたかった。

キミと。





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