第30話

僕はたまに

キミの夢を見る。


起きると

夢だった。と

がっかりする。


夢で逢えたら…

そんなことを歌う歌。

今はよくわかる。


もう夢でしか

逢えない。

どこかで会えるかも

しれないが。





僕は子どもたちを

連れて

ベビー用品量販店が

入っている

大型商業施設に

おじいさんとともに

訪れた。


僕の子どもたちが

まだ幼稚園の頃の話。


僕の子どもたちは

双子で

ふたりとも

ちょっと情緒的に

よろしくない。

多動だ。


商業施設などに

連れて行くと

興奮してしまって

大変なことになる。


家に置いておくわけにも

いかないから

連れて行く。


双子だけど

他方向に走る。

一人ずつ回収する。

とにかく大変。


だから

僕の親父、おじいさんを

連れて行った。

一人でも抑えて

もらうため。



僕は子どもに

気を取られているから

周りなんて

気にしていられない。


人前でも

大声で叫び

怒った。


客観的に見ると

子どもたちを

怒っている姿は

みっともない。



キミはそんな僕が

いるところを

遠くから見たんだ。


後からメールで

知らされた。




なんで声かけて

くれないの?と

思うところだが

僕のその状況じゃ

知り合いと

思われるの

いやだよね。


キミは

キミの家族と

その商業施設に

訪れていたんだ。



家族に

僕のことを

知り合いだと

説明するのも

面倒なこと。


知らん顔して

スルーするのは

当たり前。



僕はとにかく

子どもたちを

抑えるのに必死。


格好なんて

オシャレのオの字もない。

Tシャツに短パン。

化粧なし。




キミは僕のことを

変わってないな。と

メールに書いていた。


キミと付き合っていた

あの頃も同じ

化粧もオシャレも

興味がなく

安売りの服ばかり

着ていた。


お金ないから

買えなかった。

メイク道具なんて。


それより僕は

化粧に対して

偏見があった。




僕は

高校卒業する時点での

メイクの方法を学ぶ。の

機会がなかった。



友達はメイクを

教えてもらえるよ。と

嬉しそうに

話してきた。


当然僕を

誘ってくれた。

友達を連れてきたら

なんか

もらえたんだろう。


化粧品を買うお金が

ないから

親は首を降らない。

行けなかった。


母親もあまり

持っていなかった。


親は

僕がそんなものを

学んだら

買え。って

うるさいと

思ったのだろう。


僕は興味がないから

別によかった。

せっかくの教わる機会を

失う。


メイクの方法を

知らないまま

進学した。


学校に行ってる時も

化粧はしない。


悲劇は

卒業式の日に起こる。


メイク方法を

知らない僕は

頬にはファンデーションを

塗ったが

目に塗るのを

忘れてしまった。


知らないまま

謝恩会に出て行った。

指摘するものもない。


知らないまま

楽しく参加していた。



本当の悲劇は

友達が写真を

送ってくれたものを

見たときだった。



パンダになってる!


肌色に合わない

ファンデーションのせいで

肌は浮き

目が塗られていないので

そこだけ黒い。



僕は必要がなければ

化粧はしない!と

誓ったんだ。



今でも化粧品は

持たない。


今は動画で

いくらでも

やり方を学べる。


やり方ではない。

卒業式の日の悲劇で

僕は肌にファンデが付くと

過呼吸になった。


僕は僕にお金を

使うならば

食べるものくらいだ。




今もその点は

変わってないよ。


夏はTシャツ短パン。

冬はジャージ。

もちろんノーメイク。

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