第26話

時が経つと

何もかもが

変わっていく。


僕の連れ添いは

今僕が棲んでいた街に

働きに行っている。


なんの偶然か?

僕はあの街とは

関係のないところに

嫁に来たのに

また何で?と

思った。



あの頃立ち寄ったお店は

ほとんど姿を変えてる。


いやいや

区画さえ変わってる

箇所もあって

あれ?どこだっけ?と

迷子になる。




僕の家、

あの一軒家も

もうないよ。


棲んでたときもう

相当古かったからね。

昭和40年くらいの

家だったはず。


お風呂は

後付け感があったし

エアコンつける穴も

コンセントもなかった。



僕はキミの母親の

となりの部屋への

引っ越し騒動から

不動産屋に

目をつけられていた。



2回目に家を

出ることを辞めると

伝えたら

次の住人が決まったから

出て行くように。と

叱られた。


僕は相変わらず

世間知らずの

甘ちゃんなんだ。


大家さんは

契約時に一度

会ったきり

見たことなかった。


不動産屋が

管理していた。



しかし

大家さんは

不動産屋に

報告を受けていたかも

しれない。

いわくつきが

棲んでると。



表札は

郵便物の関係で

キミと僕の名前を

表記する必要が

あった。


キミは

大事な書類は

母親の住所に

していた。


僕に遠慮してたのか

僕には信用がないのか

今となっては

わからない。



ダンボールに

キミと僕の名前を

縦に書いた。

上下を作らないように。



キミが出て行ってから

僕も出て行ったよ。

僕は結婚相手を

見つけたんだ。



でも結婚は

すぐしたわけじゃない。


僕は密かに

キミに連絡を取り

キミのその後を

知っていたかったんだ。


もう関係を

取り戻すという

ドロドロしたものでは

ないんだ。


いつまでも関わって

いたい。

友達みたいな関係。


僕はどこまでも

甘いんだ。




僕たちは

後に棲んでた一軒家を

見に行ったね。


すでに取り壊され

駐車場になっていた。


何軒か並んでた

借家は

みんな無くなっていた。

全部取り壊したんだね。


何の駐車場だろう?と

奥の方に目をやると

老人ホームのようだった。


この土地に

棲んでいた人々は

立ち退きになったんだろう。


次の住人じゃなくて

次は売却予定だったんだろう。



周りの家は

全く変わらないのに

その場所だけが

変わってしまったんだ。




僕たちが棲んでいた

証はもうない。


あるならば

僕とキミの

記憶の中だけ。


僕に

僕の20代は

私のものだ。と

キミは言った。


キミの20代って

僕のもので

いいのか?




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