第9話

キミはニートだったけど

ほんとは何でもこなせる

優等生だった。



キミの趣味のゴルフは

特にすばらしいものが

あった。


努力家でもあったので

みるみる上達していった。


僕は一緒に

ゴルフに行ってないけど

アンダーパーで

回れるほどの

腕前になったらしい。



僕はというと

ボール競技で

得意なのは

バスケだけで

後は何をやらせても

からっきしダメ。


手に道具を持って

やる競技なんて

ほんとにお粗末で。


職場はテニスが

盛んなところだったが

全然話にならなかった。


当然ゴルフも

手に道具を持って

やる競技。

上手にできるわけがない。



キミはよく

ゴルフの練習を

打ちっ放しに行って

やっていたね。


僕は後ろの席で

ずっとボォーと

待っていた。

ただで。


知識を得ようとも

思わなかった。

僕はどんなクラブで

打とうとも

飛ぶのは30ヤード。

呆れられてた。


ただただ

ずっとボォーと

座っていただけで

よく我慢できたものだ。


キミと離れているより

その方が良かったんだ。




キミは野球も

やっていたね。


僕はキミのために

ユニフォームを入れる

袋を縫ってみた。

下手くそだけど

キミは使ってくれた。


別れたあとも

その袋を見たときは

泣きたくなった。

捨ててくれれば

いいのに。


キミには特に

意味がなかったのだろう。

単にユニフォームを入れる

袋。



野球もただただ

付いていって


応援するでもなく

お手伝いすることもない。

ご飯はちゃっかり

ご馳走になった。


キミにしてみれば

タダで飯か食えるから

来い。くらいだったんだ。




キミのために

出かけたけれど

僕の用事に

キミが来ることは

なかった。


ありとあらゆる場所に

僕はキミについて行った。

ゴルフ場には

さすがに行かなかったけど。


僕は身勝手だった

のだろうか?

ほんとは僕を

連れて行きたくなかった?




ほんとに安いものが

売っているお店に

よく行った。

ディスカウントストアだ。


ゴルフ用品を

見るためにだけど

買うことはほとんど

なかった。


今現在は

あまりしなくなったけど

別れたあとも何年かは

ゴルフ用品を見てしまう

クセがついてしまっていた。



本屋にも

よく立ち寄った。

キミはなるべく

買わずにそこで

読んで帰る。


だけどキミの

漫画のコレクションは

すごかった。


何冊かは

自分で買ったのかも

しれない。


キミにはお兄さんが

いたね。

お兄さんが買った

漫画だったと

記憶している。


ダンボールに

何箱あったかは

覚えてないけど

引っ越しするとき

何なのこれ?って

思うくらい

たくさんあった。


引っ越して

押入れにそのダンボールを

入れたのだが

押入れの下段に

入りきらないほどの

量だったはず。


ダンボールを

こっそり開けて

読んだこともあった。


アダルトな内容の

漫画が満載の

ダンボールがあった。


僕はドキドキしながら

突然の帰宅に

細心の注意を払いつつ

読んだものだ。


そして興奮しては

自分で慰めていた。

もちろん細心の注意を

払いながら。



あのたくさんのダンボール、

自分が出るときは

なかったはず。

キミが家を出るとき

ちゃんと持って行ったと

思うんだけど。


とにかくキミは

荷物が多かったね。

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