第7話

キミは僕たちの時代の

カリスマ的存在の

シンガーソングライターが

大好きだった。


僕は名前は

知っていたけれど

僕の苦手な同級生が

好きだったのを見たので

聴く気はなかった。



キミと僕が

知り合った年

彼は亡くなった。

26歳という若さで。


キミは彼のチケットを

買っていた。

とても楽しみに

していたんだよね。


チケットは払い戻しに

なって残念だったね。




彼が亡くなると

公式非公式問わず

彼に関する書籍が

たくさん出回ったね。


僕とキミは

書籍やらCDやら

見て回った。


気にいるとキミは

購入していた。


僕が買ったものも

あったかもしれない。

だけど彼の作品は

キミのものだった。



キミと彼のお墓まで

行ったね。

テレビを見て

場所を調べて。

関東の方だった。


夜中の高速を飛ばして

サービスエリアで

眠ったね。


無事にお墓に着いて

お参りできたね。




実は僕、

キミとの関係が辛くて

キミとは別に

ひとりでそこに

車で行ったんだ。


箱根の山下りで

車を壊してしまって

その日に帰ることが

できなくなった。


小田原の

車のディラーの

駐車場で

震えてた。


幸い車の中に

引っ越しで使った

毛布が一枚

残っていた。


それにくるまって

寒さをしのいだ。


夜が明け

ディラーの店長さんが

この車で帰るのは

無理だから

新幹線で帰ると

いいよ。と

お金まで貸してくれた。


店長さん。

僕に優しくしてくれて

ありがとうございます。

今も忘れていませんよ。



後日、小田原まで

新幹線に乗って

お金を返しに行ったのは

言うまでもないか。





僕はふっと

突拍子もないことを

考えて

しかも実行に移した。


ナゾの関東行きも

急だった。

お金も持たずに。

無計画なんだ。



キミは

僕のことを

変な人。としか

思ってなかっただろう。



僕はキミのこと

とっても悩んでいたんだ。

どうしたら仲良く

過ごせるのか。


キミの好きなことを

掘り下げて

どんなことでも

協力したつもりだった。


だけどそれは

キミの気持ちに

寄り添っては

いなかったんだろう。


ほんとにキミは

怒ると

口をきかなかった。




今現在、

彼の息子がデビューして

活動している。

だか彼ではない。

唯一無二の存在

だったんだ。




今キミは

どんなアーティストが

好きなんだろう?

元気にしてるのか?



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