第6話

後半がとても

辛かったから

イヤな思い出ばかり

と思われがちだが

楽しい日々が

あったんだ。



季節季節で

いろんな場所に

出かけたよ。



藤棚を見に行って

露店で売ってるものを

買って食べた。

いろんなお祭りに出かけた。


大きな花火大会に

出かけて

駐車場から会場まで

歩いていったね。

遠かった。


僕にいろんなものを

見せてくれた。

楽しかった。


戻れるなら

戻りたい。

ワンルームのアパートで

寄り添って棲んでた

あの頃に。



でもね。

ほんとに後半が

辛すぎて

映像として

蘇ってこないんだ。


なんでだろ?

楽しかったあの頃が

もう思い出せないんだ。


なんで辛かったことしか

思い出せないのだろう。




辛かった旅行といえば

キミのバイト先の

旅行について行った時。

ディズニーランド

だった。


夢の国なんだから

楽しいはずが

ココでも辛かったんだ。


入園してすぐに

ケンカになって

口をきいてくれない。


何の乗り物だったか

キャストさんが

親指を立てて

グッってやるのを

みんなで合わせて

やらなきゃならないのに

僕にはわからなかった。

それにもキミは

へそを曲げた。


大きなぬいぐるみを

買ってあげようと

僕に言うのだが

すでに僕は

ディズニーランドなんて

出て行きたかった。


お金をたくさん

持っていたわけでも

なかったし

いらない。と

ぶっきらぼうに

断った。



ホテルに帰っても

僕のココロは

ひとりぼっちだ。


それでもキミは

旅行先という

環境がそうさせるのか

僕を求めてきた。


僕はほんとは

そんな気になれなかった。


でもキミの言うことは

絶対だから

拒めなかった。



帰りのバスも

やっぱり口をきいて

もらえなかった。


僕のことが

気に入らないなら

ひとりで行けば

よかったのに。


旅行代がタダだったから

連れてきたんだ。

ただそれだけ。




僕が沖縄旅行に

当選して

一緒に行った時も

同じだった。


時系列的には

沖縄旅行は

まだ病気で入院する

前の出来事だけど。


大阪の伊丹空港が

集合場所で

僕たちはそこまで

自力で行くしかなかった。


今みたいに

ネットなどで

格安チケットで

向かえる移動手段を

調べられる時代では

なかった。


だかキミは

安く済む方法を

見つけてくれたね。

お金を払ったのは

僕だったけど。



大阪に行く自体

旅行みたいなものだが

伊丹空港まで行った

映像的記憶が

ほぼない。


僕は初飛行機だった。

キミはどうだったのか?

今となっては

もうわからない。


飛行機の出発する

まさに飛び上がる瞬間が

僕は嫌いだ。

あれから僕は

飛行機に乗っていない。


飛び立ってから

僕はトイレにいた。

気持ち悪かった。


機内食は

美味しかった。

沖縄なんで

おやつだけどね。


耳には鮮明に

残ってる。

♪ LA·LA ·LA· LOVE SONG

/久保田利伸 with NAOMI

CAMPBELL



沖縄に着いても

どこをどう歩いて

何をしたか

全く覚えていない。


パイナップルを

食べたことくらい。

まだ未熟なやつ。

旬じゃなかった。


帰りの飛行機は

関西空港に降り立った。


飛行機なんて

二度と乗りたくない。


そんなことを

考えながら

帰った。



キミと行ったのに

キミのこと

全然覚えていないのは

キミが怒って

口をきいては

くれなかったから?


その旅行も

キミは僕を求めてきたね。

ふかふかのベッドは

嬉しかった。




キミと泊まりで

旅行したのは

その2つだね。


どちらも

旅行中は楽しくなかったな。




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